世紀の一戦への道のりはまだまだ遠いのか。格闘技イベント「RIZIN」の榊原信行実行委員長(55)は、ボクシングの元5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(41=米国)VS那須川天心(20)を予定通り大みそかの「RIZIN.14」(さいたまスーパーアリーナ)で開催することを発表した。だが相手が相手だけに安心できないのが実情のようで、本紙の直撃に同委員長が語ったのは、あまりに悲壮な決意と危機感だった。

 騒動が勃発したのは7日(日本時間8日)のことだった。5日にメイウェザー出席のもと、那須川との対戦が発表されたが、米国に戻ったメイウェザーが自身のSNSで試合中止を一方的に宣言したのだ。

 原因はエキシビションマッチを巡る日米の認識の相違だ。これを受けて緊急渡米して交渉した榊原委員長は17日、この一戦がエキシビションで行われることを明言し、ヘッドギアなしKOあり蹴りなしのボクシングに近いルールで行われることを発表した。

 これでひとまず収束かと思いきや、現状は違った。榊原氏は本紙に「今後も覚悟というか危機感を持って、より慎重に、お互い確認しながらやっていきます。なんとか大きなトラブルごとがないようにしたい」と厳しい見解を示した。難交渉が予想される理由がある。

「(この試合は)実績とか経験に基づくわけでも、過去に競技として成立したものになぞらえてやるわけでもない。新しい形でどこまで勝負論のあるものにするか。『あれをやろう』と形の見えているものなら交渉ももう少し早いんだろうけど、一つずつ確認していきながらだから。正直言って、今でもミスアンダースタンディング(誤解)が起きやすい状況に変わりはない。まだまだ(トラブルが起こる可能性は)ありますよ」

 また、相手が世界的スーパースターゆえのハードルもそびえる。「いろいろなビジネスをやっている中で(メイウェザーは)来年ビッグマッチ(マニー・パッキャオとの再戦)も考えている。そういうものとの調整と並行して進んでいるので、交渉する順番も僕らを最優先にしてくれるわけではない」と明かす。そもそも交渉時間を確保すること自体が困難なのだ。

 ともあれ、これで夢対決実現に一歩近づいたことは確か。

 榊原氏が「メイウェザー選手からすると、ボクシングに近いルールで年下のヤングキッドを『全力でぶっ倒してやる』とは言えない。天心はなめられているのかもしれない。本気のスイッチを押せるかどうか」と話す通り「普通のエキシビション」となるか「神試合」となるかは神童の拳一つに委ねられることは間違いない。