神の子を超える。格闘技イベント「RIZIN.13」(30日、さいたまスーパーアリーナ)に臨む“キック界の神童”那須川天心(20)が19日、前日に胃がんで死去した山本“KID”徳郁さん(享年41)への思いを語った。格闘界が注目する堀口恭司(27)との頂上対決で、あの“伝説の一戦”を凌駕する戦いを見せる決意だ。

 練習を公開した那須川は、シャドーや3分間のミット打ちで軽快な動きを披露。順調な仕上がりぶりをうかがわせた。キックボクシングルールで行われる堀口戦に向け「距離やフェイントで相手をだますことが得意な選手なんで、そこはしっかり気をつけ、あとはいつも通り戦っていくだけと思います」と語った。

 偉大な大先輩のためにも負けられない一戦だ。KIDさんとはプライベートでも親交があったため「ショックです。この試合はKIDさんに見てもらいたかった」と早すぎる死を悼んだ。

 KIDさんが日本で活躍したころはまだ幼く、生観戦はしたことがない。だが高校生のころに当時の映像を見て衝撃を受けた試合がある。2004年大みそかの魔裟斗との死闘、そして衝撃のヒザ蹴りで4秒殺した06年5月の宮田和幸戦だ。

「戦いの神というか、男なら誰もが憧れる存在ですよね。ずっとキックボクシングしか見てなかったんですけど、そこに総合(格闘技)の選手(KIDさん)が上がって…。4秒でKO勝ちした試合もすごかったですよね。チャンスがあればいつか(記録更新を)狙いたいです。KIDさんは大きな選手に立ち向かったり、いろいろチャレンジを続けたじゃないですか。そういう姿勢にひかれました」

 2000年代のブームをけん引したKIDさんは、格闘技界に黄金時代をもたらすことを目指す那須川にとって目標とする存在だ。「難しいことですけど、超えないといけない。自分なりのやり方で超えたいと思います」と決意を改めた。

 くしくも今回の戦いは魔裟斗戦と同じく「キックボクサーvs総合格闘家」の構図。「魔裟斗さんとKIDさんには悪いですけど(内容で)超さなきゃダメですよね。『天心vs堀口から格闘技が変わった』と語り継がれる試合にしないと」

 昨年、KIDさんから「格闘技を盛り上げてよ」と声をかけられた。その言葉を胸に秘め、運命の決戦に向かう。