総合格闘技(MMA)転向が決まった大相撲の元幕内大砂嵐(26=エジプト)のコーチに就任した元UFC世界ヘビー級王者のジョシュ・バーネット(40=米国)が7日「最強育成計画」を明かした。大砂嵐のMMAへの適応能力に太鼓判を押すと同時に「スモー・キャッチ・レスリング」という新スタイルの確立も約束。RIZINの榊原信行実行委員長(54)がバーネットに寄せる期待は大きく、将来の格闘技界を背負う大器育成を一任した格好だ。

 大砂嵐は2日発行本紙でRIZINへの参戦を表明。4日には榊原委員長が「RIZIN.13」(9月30日、さいたまスーパーアリーナ)でデビュー戦を予定していることを発表した。

 現在、デビュー戦に向けて米国でMMAの猛特訓に入っているが、コーチ役に就任したのがバーネットだ。4月にテレビ番組に出演した後、大砂嵐が直訴して弟子入りが実現。番組の企画とはいえ実際に相撲をとって肌を合わせたことで「強さはよく分かった。テクニックはもちろんだけど、フィジカルの強さが素晴らしい。世界最強を目指す素質はあるよ」と力説した。

 2日には愛弟子のアリーシャ・ガルシア(24=米国)が出場した「RIZIN.10」でセコンドを務めるために来日。1日に渡米した大砂嵐とは太平洋上ですれ違った格好だが「明確な育成プランがある」と断言するや、こう続けた。

「彼と一緒に全く新しい格闘スタイルをつくり上げるつもりだ。キャッチレスリングと相撲をミックスした『スモー・キャッチ・レスリング』とでも言うべきかな。組んでからの力はずばぬけたものがある。ならば、その体勢をいかにしてつくるかが重要。ジャブを打ちながら相手を捕獲したり、ガードしながら相手を引きつけて捕獲する技術もある。彼の持つ技術をいったんは分解して、MMAに合わせて再構築していくことになるだろうね」

 かなり難解だが、理論家のバーネットらしく話の筋道はきちんと立っている。元UFC世界ヘビー級王者にして、数多くの選手を成功へと導いた名コーチだけに説得力は十分。これまで大相撲出身選手がMMAで成功を収める例は少なかったが「彼らは年を取って引退した後に戦った。でも大砂嵐は若いし、自分から弟子入りを志願するほどの情熱もあるんだから、過去の選手とは違う」と不安を一蹴した。

 最後に「私の最大の夢はUWFの再興だ。彼にはその夢を手伝ってもらうよ。スーパー・ベイダー(ビッグバン・ベイダー)のようになってもらえたら最高だね」と笑顔で語ったバーネット。大砂嵐をどんな総合格闘技戦士に変えるのか。その手腕に期待が集まる。

榊原委員長も指導に期待

 バーネットの育成術に対する榊原委員長の評価は高い。具体的な技術はもちろん、特に期待しているのが「プロとしての姿勢」の指導だ。

「ジョシュには『プロレスラーとして求められるもの』を大砂嵐にも注入してもらいたいよね。自分をどういうふうに表現して、お客さんにどうアピールしていくのがいいのかとか。そういう部分で期待をしています。でもスーパー・ベイダーはタイプが違うんじゃないか?(笑い)」

 白星を追求することが最も評価された大相撲と違い、MMAでは勝利に加えて「いかに観客を魅了できるか」が重要になることを強調した榊原委員長は「ジョシュなりの『猪木イズム』だったり『UWFの魂』だったり…。そういうものを伝えてほしい」と続けた。

 大きな期待を背負ったバーネットも「もちろんそういうプロ意識も伝えていきたい。個性をいかに出して、それをファンに伝えられるかが大事になる。人それぞれの部分が大きいけど、教えられる部分はできる限り、伝えていきたい」とレスラー魂の継承に自信をのぞかせていた。