こんなはずでは…。2020年東京五輪組織委員会は28日の理事会で、今月末に国際オリンピック委員会(IOC)に提出する追加種目を野球・ソフトボール、空手、ローラースポーツのスケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの5競技18種目とすることを決定した。競技数を増やした理由は若者人気を重視したためだが、この“とばっちり”を受けたのが大本命だった野球・ソフト。出場国が8チームから6チームに減らされる想定外の状況に困惑の声が上がっており、盛り上がりにも影響しそうだ。

 満面の笑みとはいかなかった。「我々は8チームでいくと思っていたからね。今までのオリンピックも全部8だった。『なんで?』って正直あるんだけど、それも決められたこと」。全日本野球協会(BFJ)の鈴木義信副会長(71)は言葉を選びつつも、苦しい胸の内を明かした。

 2008年北京五輪以来、3大会ぶりの復活へ国内選考を突破した。しかし、出場国が6に減らされたのは寝耳に水で「本日知った次第」(鈴木副会長)。来年8月のIOC総会で正式決定すれば、出場国の半数がメダルを獲得する異常事態になる。「オリンピックが一番トップレベルの大会」(日本野球機構の井原敦事務局長)との言葉もむなしく響いた。

 組織委・室伏広治スポーツディレクター(40)の「おそらく世界の皆さんにもサプライズがあったかもしれない」との言葉通り、若者人気を重視しての5競技提案は斬新でもある。だが、追加種目全体の選手数は上限500人までと決められており、その反動が人数の多い野球・ソフトを直撃した。

 組織委のある理事は6チームに縮小された理由の一つに「アスリート目線で考えると、シーズン中なので選手を守ることも大事」とプロの公式戦の真っ最中であるため、コンディションに配慮したことを挙げた。とはいえ、野球側の受け止め方は全く逆だ。北京五輪では8チームを2組に分け1回戦総当たりを行い、各組上位2チームで決勝トーナメントを争ったが、6チームでは同じ方式は難しくなる。

「一つの案としては1回戦総当たり。試合数は増える可能性がある。今までだったら(決勝まで)5試合でしょ。それが、今度は(1回戦を)5試合やって(決勝トーナメントの)2試合だから7試合になる可能性がある」(鈴木副会長)。肉体的な負担は逆に増す。口頭で協力を約束しているというメジャーリーガーの参戦にも影響しそうだ。

 五輪出場枠の配分も頭の痛い問題になる。開催国の日本を除けば、枠はたった「5」。種目追加検討会議のオブザーバーを務めた高橋尚子氏(43)は「『五大陸っていうところからちゃんと』っていうふうに考えられていると思う」と話したが、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、メキシコ、ベネズエラなど強豪国が揃う中南米地区は過酷な予選を強いられる。

 厳選された6か国の争いにならなければ、最高峰の戦いとうたう五輪の根幹も揺るぎかねない。盛り上がりを見せるはずの野球が重い課題を突きつけられた。