【空手】喜友名諒 五輪延期で「この1年の熟度を考えた時さらに絶頂期を迎えるに違いない」

2020年04月26日 11時00分

稽古に余念がない喜友名は貪欲にレベルアップを図っている(1月撮影)

 東京五輪で念願の初採用が決まり「世界中に空手の魅力を発信しよう」と意気込んでいた空手界にとっても、新型コロナウイルス感染拡大の影響は決して小さくない。五輪が史上初めて1年延期となり、既に発表されていた日本人の内定者8選手の処遇も保留扱いとなった。その中で、選手たちは今、何を思っているのか。日本人で最も金メダルに近い男と言われる形男子の喜友名諒(29=劉衛流龍鳳会)が本紙の取材に応じ、胸の内を明かした。

「東京五輪は空手を多くの人に見てもらういいチャンス。それで空手というものを知ってもらいたい」。喜友名は真夏の大舞台を前に、並々ならぬ闘志を燃やしていた。

 そんな中、3月24日の夜に延期の一報をテレビとネットのニュースで知った。直後は「4年前に空手が五輪に採用されることが決まってから、ずっと2020年の夏を意識し、プレミアリーグへの参戦を重ねて照準を合わせてきたので、落胆したことは否めない」と動揺は隠せなかった。

 その一方で「中止ではなく延期と決まった時は、出場できる希望が見えたので、少しホッとした」。気持ちも既に切り替えており「私の年齢と私の出場種目の特性上、この1年の熟度を考えた時、さらに絶頂期を迎えるに違いないと思えた。修正するのは、心身の照準を1年後に合わせ直すだけにすぎない」と前を向いている。

 思わぬ形で延期となったが、その期間で貪欲にレベルアップを目指す。「(五輪の選考会が続いた)約2年間は、1年中試合だったので、シーズンごとに分けたトレーニングが不可能な状態だった。本来あるべきオフシーズンを得られたことで、技の一つひとつの動作の理合(理にかなった身体動作)を考え、自分の技を丁寧に見直し、分析する時間ができ、とても充実している」と手応えを口にする。形の元世界女王の宇佐美里香氏(34)も「練習できる機会が生まれたので、伸びる可能性は十分にある」と話しており、さらに進化した姿を来夏に見せてくれそうだ。

 ただ、喜友名が指導を受けている空手界のレジェンド・佐久本嗣男氏(72)が運営する佐久本空手アカデミーのある沖縄県でも新型コロナウイルスの感染が拡大している。稽古人数は最小限の12人、時間はこれまでの半分の3時間程度に限定。

 だが「時間や空間、人が限られている分、その時間を大切にするようになり、より一層集中して取り組むようになった。アカデミーの時間のみでは稽古量が足りないので、佐久本先生に課題をもらい、自宅に帰ってから個人で課題修正にも励んでいる。また、フィジカルトレーニングにおいても、現在は自宅でやっている」と地道に己の体を鍛えている。仕切り直しとなる本番までは約1年3か月。喜友名は五輪での金メダル獲得だけでなく、さらなる高みを見すえる。

 それは、恩師である佐久本氏のような人間になることだ。「私が知る限りでは、唯一無二の存在であり、憧れであり、その背中を追い求め続けていきたいと思っている。今の自分がするべきことを一つひとつクリアし、様々なスキルを身に付け、目指す人間像にしていきたい」と気合は十分。目標達成に向け、人生を空手にささげ続ける。

 ☆きゆな・りょう 1990年7月12日生まれ。沖縄県出身。5歳から空手を始め、2012年に初めて日本代表に選出。14年に世界選手権で初優勝を果たすと、16年と18年にも世界の頂点に立った。昨年12月に行われた全日本選手権では、史上最多タイとなる8連覇を達成。18年7月からは負けなしと国内外で圧倒的な強さを誇っており、沖縄県勢では夏冬通じて初となる五輪金メダルが期待される。170センチ、78キロ。