武尊 那須川戦に勝利なら「逆に燃え尽きてたかも…」 引退を思いとどまらせた〝2人〟の言葉

2022年06月28日 05時15分

会見で無期限休養の決断を明かした武尊(東スポWeb)
会見で無期限休養の決断を明かした武尊(東スポWeb)

 世紀の一戦、負けて良かった――。立ち技メガイベント「THE MATCH」で那須川天心(23)に敗れたK―1のエース・武尊(30)が27日に都内で会見を開き、無期限の休養を発表した。かねて「負けたら引退」を公言し去就に注目が集まっていたが、心身を万全にしての復活を見据えているという。武尊は会見後の単独直撃に応じ、日本中の注目を集めた大一番で喫した敗北の〝価値〟を明かした。

 キックボクシングの頂上決戦から8日後、武尊は初の公の場となる記者会見に出席した。注目が集まっていた去就について「この10年は体調を無理しながらでもやってきた部分があった。ここで一度、心と体のコンディションを正常に戻して、新たなチャレンジができたら。前向きな意味で休養をさせてもらおうと思っています」と無期限の休養を発表した。

 長年にわたる激闘の代償は小さくなく、拳やヒザ、腰の故障に悩まされていた。さらにうつ病とパニック障害の診断を受けていたことも公表し、まずは海外で心身の療養に努める意向だ。保持していたK―1スーパーフェザー級王座は返上となった。

 もっとも今回の決断はすべて現役続行と復活を前提としたもの。試合後に多くのファンから感謝と引退回避を望む声が届いたことで、公言していた「負けたら引退」の心境に変化が生まれたという。

 仲間たちの支えもあった。会見後に取材に応じた武尊は、親交が深く敗戦後の1週間、常に側にいてくれた人気ロックバンド「ONE OK ROCK」のTakaと、タレントのローラへの感謝も口にした。

「Takaさんとローラはすごい温かい言葉をかけてくれて。試合後の会場でも2人だけは来てくれて。『武尊の存在がみんなに勇気を与えたし、あれだけ人の心を動かせるというのは勝ち負けを超えたものだし、武尊の財産だと思うよ』って。すごい勇気をもらったというか、いい意味で価値観が変わったというか。助けられましたね」

 負けたらすべてを失うと思っていたが、実際はそうではなかったことに気づかされた。では逆に、もしも自分が那須川に勝っていたらどうなっていたのか。その問いに武尊は熟考した上でこう答えた。

「どうなってたんだろう…。もしかしたら、満足しちゃってたかもしれないです。逆に燃え尽きちゃってたかもしれないですね。今回に関しては、僕の人生においては負けて良かったのかなって。勝ったことで全部報われて、満足して…、そっちのほうが終わってたんじゃないかな」

 悔しさはもちろん消えない。それでも武尊は、世紀の一戦で喫した敗北を糧にさらなる成長を遂げるつもりだ。

 会見では今後に関して「一つ決心はしたんですけど、明確に何と言うのは考えないようにしている」と語るのみだった。MMA(総合格闘技)挑戦もささやかれているが、次のような胸中を明かした。

「それも一つあるんですけど、まだキックでやり残したこともあるので。ここで僕と天心選手がいなくなったら、キック界が沈んじゃうと思うので。天心選手はボクシングに行ってしまうので、僕がやるしかないのかなと思いますし。あんまり明言はしたくないですけど、キック界への恩返しプラス、まだやり残したことがあるのかなと」

 くしくも那須川は試合後のインタビューで「負けたらマジで死のうと思っていた」と話していた。しかし、現実に敗者となった武尊は「勝っていたら終わっていた」と振り返り、負けたことで生きる道を見いだした。残酷で美しい結末を迎えた「THE MATCH」の本当の価値は、これからの武尊の格闘技人生によって変わっていく。

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