“新・神の左”の誕生か。WBA世界ミドル級王者の村田諒太(32=帝拳)が2日、同6位エマヌエーレ・ブランダムラ(38=イタリア)を迎え撃つV1戦(15日、横浜アリーナ)に向け都内のジムで練習を公開した。

 アドリアン・ルナ(28=メキシコ)を相手にした2ラウンドのスパーリングでは2度、鋭い左をヒットさせると集まった報道陣がどよめいた。ヘッドギアがなければ、確実にダウンを奪っていた強烈な左は、世界王者となってからの進化の証しだ。

 村田の持ち味といえばパワフルにプレッシャーをかけて右でダメージを与えるスタイル。ダウンを奪う右ストレートを打ち込むには「左足に体重が乗るから(強い左は)打てなかったんです」(村田)。一方で、今回の試合のテーマを王者は「欲を出しすぎず、世界王者らしいボクシングを見せようという意識が過剰にならないこと」と話す。昨年10月にベルトを奪ったアッサン・エンダム(34=フランス)戦では、同5月に判定負けしていたため「もっと圧倒してやる」との気持ちが強く出た。このため距離を詰めすぎて、威力のあるパンチを打ち込めなかったという。

 しかし、気負わずに相手と適切な距離を取れば、重心が後ろの右足に乗ることもあり、体重移動をしながら強烈な左が打てるようになったというわけだ。

 3月1日の試合を最後に引退した、高校とジムの先輩でもある元WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏(35)は左構えから必殺の左ストレートでKOを量産し「神の左」と呼ばれた。右構えの村田が左でもダウンを奪えるようになれば、“新・神の左”といったところ。「今日みたいに(左が)自然に出せれば」と話す王者は、どちらの拳で仕留めるか。