引退・山中がボクシング界に“遺言” 届くか「計量失格に厳罰」求める声

2018年03月03日 11時00分

リングを下りる山中。何とも後味の悪い一戦だ

 こんなことが許されていいのか。WBC世界バンタム級タイトルマッチ(1日、東京・両国国技館)で、元王者で同級1位の山中慎介(35=帝拳)は前日計量をパスできずに王座を剥奪された前王者ルイス・ネリ(23=メキシコ)に2回1分3秒、TKO負けを喫し王座奪回に失敗。試合後に現役引退を表明した。昨年8月にベルトを奪われた試合後にドーピングで陽性反応を示し、今回は計量失格と愚行を繰り返したネリに翻弄され続けた「神の左」は今後の厳罰化を強く望む“遺言”を残したが、世界に波紋を広げそうだ。

 1回終盤にダウンを喫した山中は、2回にも3度マットに崩れ落ちてリングであおむけになった。その瞬間レフェリーはTKOを宣告。「神の左」と呼ばれた左ストレートを武器に、日本歴代2位の世界王座12連続防衛を果たした偉大なボクサーのキャリアに終止符が打たれた。

「こうしておけば良かったという悔いはない。これが最後。これで終わりです」。試合後の控室で山中はこう話し、現役引退を宣言した。

 これが普通の敗戦ならば完敗を認めてリングを去る…となるが、相手のネリは前日計量でバンタム級リミットの53・5キロから当初2・3キロの大オーバー。スーパーバンタム級のリミットをも上回る体重から2時間後の再計量までに1キロ減らしたものの、パスできずに体重超過で王座を剥奪された。階級制の意味を否定する行為を山中は「人として失格」と厳しく批判した。

 帝拳ジムの浜田剛史代表(57)は「昨日(2月28日)の計量でネリがオーバーしたことでモチベーションが別のほうにいってしまった」と、突如として湧いた怒りの感情が山中から冷静さを奪っていたと打ち明ける。TKOとはいっても2階級上のフェザー級に負けたようなもので、誰もにモヤモヤ感の残る結末。実際、試合時に60・1キロあったネリに対し、山中は一日で59・2キロまで増量したものの、体重差は埋まらなかった。山中はその影響について「全くないとは言えないけど」と話した以外の言い訳は口にせず「あまりにも自分が打たれ弱いと思うほど打たれてしまった」と潔く敗戦を認めた。

 ただ、簡単に減量をあきらめて計量失格となったボクサーが平然と試合に臨んで高い勝率をキープ、王座を剥奪されてもすぐに再チャンスがめぐってくるという世界的な風潮には「ボクシング界全体でもっとしっかりしてほしい。(罰則などを)厳しくしないとファンも納得しない」と怒りをあらわにした。

 さらにジムと高校(南京都高)の後輩でWBA世界ミドル級王者の村田諒太(32)は「計量失格で興行が潰れるようなことがあったら民事訴訟を起こして、損害をすべて請求するとかのシステムをつくらないといけないでしょう」と緊急提言まで行った。

 実際、プロボクシングの主要4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)で計量をクリアできずに失格となった際にペナルティーがあるのは、ファイトマネーの40%を没収するWBAのみ。試合によっては罰則を契約書に明文化するケースもあるが、こうした付帯条件を要求すると対戦を拒否される可能性があるので、なかなかそうはできない事情もある。

 だが、この日の試合の立会人を務めたマイク・グリフィン氏が「計量で失格したボクサーは6か月とか9か月のサスペンデッド(出場停止)にしなければいけない」と話すなど、山中の訴えが世界のボクシング界を動かすきっかけとなるかもしれない。ドーピング疑惑、計量失格による王座剥奪とネリの愚行に振り回された末に、その2試合にいずれも不本意な形で敗れた。すっきりしない最後でリングを去ることになった「神の左」の“遺言”をボクシング界はどう聞くのか。