【ボクシング】山中 ボクシング冒とく男・ネリを「神の左」で打ち抜く!

2018年03月01日 11時30分

怒り心頭の山中(左)はネリを一喝

「神の左」の思いが踏みにじられた。WBC世界バンタム級タイトルマッチ(1日、両国国技館)の前日計量が28日に行われ、同級1位の山中慎介(35=帝拳)は一発パスしたものの、王者のルイス・ネリ(23=メキシコ)は最初の計量で2・3キロオーバー。約2時間後の再計量もパスできず、王座を剥奪された。この醜態にネリ陣営は責任のなすり合い。本来なら試合は中止になってもおかしくないが、そうもいかない事情とは――。

 計量予定時刻の午後1時過ぎ、信じられない光景が広がった。山中は200グラムアンダーの53・3キロで一発パスしたものの、ネリが乗ったはかりが指した数字は、何と2・3キロオーバーの55・8キロ。山中が思わず「ふざけんな、おまえ」と怒鳴り、涙を浮かべた。

 ネリには2時間の猶予が与えられたが、午後3時過ぎの再計量でも1・3キロオーバーの54・8キロ。この結果、王座剥奪が決まった。試合は行われ、山中が勝てば王座復帰、負けか引き分けなら王座は空位となる。

 計量会場は騒然となり、関係者の表情は一気に凍りついた。そんな中、会場の外ではネリのアシスタントトレーナーが「前回は我々の力でベルトを取ったが、今回は栄養士を雇って、我々は減量に関与する権利がなくなった」とブチまけた。

 だがこの直後、責任を押し付けられた形の栄養士が「今朝8時で3キロオーバー。私が他のボクサーから得た経験では、そこから水を抜けば99%成功していたが、彼(ネリ)の体がそれに応えてくれなかった」と打ち明けた。2か月も指導していながら体質すら把握できていなかった体たらく。前日は上半身裸で練習するなど、本人も周囲も減量に対する危機感は全くなく、チームとして機能していなかった。

 急きょ試合当日の正午にネリのみが計量を行うことになった。58キロを超えた場合は何らかのペナルティーが科されることになったが、これがどこまで効力があるかは未知数だ。

 そもそもネリの1回目の55・8キロは、1階級上のスーパーバンタム級のリミットも500グラム上回る。その後1キロ落としたとはいえ、階級制の意味をなさないほどのオーバーウエート。最もキツい最後の減量をしなかったことは体調面で有利になることもあり、計量失格となったボクサーの勝率は意外に高い。山中が不利な状況なのは否めない。

 ならば仕切り直しで3か月や半年後に再試合としたほうがよさそうに思えるが「勝っても負けても今回が最後だと思ってやってきた」(帝拳ジム・本田明彦会長)という山中に、またゼロからの体づくりを求めるのは年齢的にも精神的にも厳しい。周囲のサポートや興行という側面を考えても、中止という判断に行き着かなかった。

 計量後、一度は無言で引き揚げた山中は「今回の試合に懸ける思いは強かった。お互いにしっかりしたコンディションでやりたかった。それでも試合はあるので、気持ちを整えて臨みたい」と静かに語った。前回はドーピングに陽性反応を示し、愛人を同伴した今回は計量失格で王座剥奪。ボクシングをどこまでも冒とくするネリを、山中の「神の左」が打ち抜くしか、すっきりする方法はない。