王座返上・井岡一翔に迫る「引退」の日

2017年11月10日 16時30分

会見した井岡一法会長
会見した井岡一法会長

 ボクシングの井岡ジムは9日、大阪市内で記者会見を行い、同ジムに所属する井岡一翔(28)が5度防衛したWBA世界フライ級王座を同日付で返上したことを発表した。2011年から恒例となっている大みそかも試合はせず、同会長は一翔がこのまま引退する可能性があることも示唆。日本最速での世界王座獲得など数々の栄光を打ち立てた王者にいったい何が起こったのか――。

 会見には一翔の父でもある井岡一法会長(50)だけが出席した。重苦しいムードが漂う中で同会長は「結婚以降、東京に生活の拠点を移して(大阪の)ジムにコンスタントに来ていない。東京の練習を見ていないし、スパーリングもしていない。一翔本人も『準備が大みそかに間に合わない』と言っているので1週間ぐらい前に王座返上を決めた」と経緯を話した。

 2011年以来、大みそかの一翔戦は関西の暮れの定番となっていた。にもかかわらず、この日まで何もアナウンスがないというのは、7年連続の開催を心待ちにしているファンに対して失礼になる。WBAからはランク1位アルテム・ダラキアン(30=ウクライナ)との対戦指令が8月に出ており「相手(ダラキアン)もあまり待たせられない」(一法会長)こともあって、このタイミングでの発表となった。

 一翔は11年2月に、当時の世界王座獲得日本最速記録となる7戦目でWBC世界ミニマム級タイトルを奪取。翌年6月には当時のWBA同級王者の八重樫東(34=大橋)と、日本初の団体間による王座統一戦を行って判定勝ちした。その後12年大みそかにWBA世界ライトフライ級王座、15年4月に同フライ級タイトルを獲得して3階級制覇を達成。輝かしい経歴を誇る。

 今年4月22日にはノクノイ・シットプラサート(30=タイ)を判定で下して同王座V5を達成。その直後の5月には歌手の谷村奈南(30)と結婚したが、ここが大きな分岐点になった。一法会長は「結婚生活がいろいろとある中で、今までみたいに切磋琢磨、コンスタントに練習ができていない」と、プライベートの変化が今回の結論につながったと説明する。

 一部では父子の不仲も取り沙汰されているが「東京でも会ってるし、ここ(井岡ジム)にも来てる。大みそかに間に合わない、ということも本人と何回か話した」とコミュニケーションは取れているという。

 気になる今後について同会長は「二つに一つ。やる気があるなら教えるし、モチベーションがないならやめるしかない。身を引くとなれば、きちんと『引退式』をやる」とし、一翔がこのままリングを去る可能性まで言及した。

 もちろん、一法会長は現役続行を信じている。

「週に3~4回は走ってるし、ウエートも絞ってる。やる気がないならトレーニングしないと思う。進退については本人の意思を尊重するけど、またやるんちゃうか、というのはある」

 その上で「スイッチが入れば早い。その時はジムとしても応援していく」と全面サポートを約束。ただし再びリングに上がるためには「仮住まい、単身赴任でもいいから、こっち(大阪)で練習に集中できる環境をつくること」を条件に挙げた。

 引退や階級変更を前提としない王座返上は極めて異例のこと。4月の試合以降、公の場に姿を見せていない一翔は去就を含めてどんな決断をするのか。本人による意思表示が待たれるところだ。