注目のWBA世界ミドル級タイトルマッチ(10月22日、東京・両国国技館)まで1か月余りとなった15日、同級1位の村田諒太(31=帝拳)の“栄光への青写真”が明らかになった。村田はこの日から都内のジムで本格的なスパーリングを開始。5月に行われた王座決定戦で判定負けした現王者のアッサン・エンダム(33=フランス)にリベンジを果たせば、早ければ1年後のメガマッチ実現に向けて動きだす計画だ。

 この日、村田はメキシコ選手と3ラウンド、拳を交えた。右の強打を軸に攻勢だったが、接近戦で手詰まりになる場面も。直後のミット打ちでは、距離を詰めてくるエンダムを想定し、至近距離からの右ショートストレートを繰り返した。

 まだ試行錯誤を続ける状況とはいえ、試合に向けての思いは「皆さんが望む完全決着」でブレていない。もちろんエンダムに勝って世界王者になることが大前提だが、村田は“その先”についても言及。「ゴロフキン対カネロの勝者とやるのが、僕の目指すところ」とブチ上げた。

 16日(日本時間17日)に米ラスベガスで行われるWBAスーパー、WBC、IBF統一世界ミドル級王者のゲンナジー・ゴロフキン(35=カザフスタン)と“カネロ”ことサウル・アルバレス(27=メキシコ)の試合は「今年最大のメガマッチ」と言われている。世紀の対決に臨む両者と比べれば、まだ村田もかすんだ存在。にもかかわらずメガマッチの勝者との対戦を希望するとは、ずいぶん大きく出たようにも見える。

 もちろん村田自身も「今、ゴロフキンやカネロとやりたいと言っても(世界のボクシングファンや関係者からは)『Who is he?』と言われるのはわかっています」と、同じミドル級で世界王者になれば即、対戦がかなうというような甘い期待をしているわけではない。帝拳ジムの本田明彦会長(70)も「すぐにゴロフキンやカネロと、というのはあり得ない」と現実的だ。

 米国では先月26日に行われた元5階級制覇王者のフロイド・メイウェザー(40=米国)と総合格闘技「UFC」の2階級制覇王者コナー・マクレガー(29=アイルランド)の対戦が大きな話題となったように、ビッグマッチと呼ばれる条件は誰と誰が戦うか、その選手にどれだけの商品価値があるかに尽きる。村田も段階を踏んで知名度を上げていくことが必要。とはいえ来年1月に32歳になることを考えると、時間に余裕はない。「ここまで来たら、強い選手としかやりたくない」(村田)と本音を漏らすのも当然だ。

 そこで、本田会長が明かした構想は「世界王者になったら、次は米国でやる。そこでしっかりした評価を得たら、ゴロフキン、あるいはカネロ戦へ動く」というものだ。そうなると最速で次々戦、1年後にはメガマッチのリングに上がる可能性があるということだ。

 ロンドン五輪では日本勢で48年ぶりの金メダルを、しかもミドル級で獲得した。「絶対無理」「夢物語」と言われそうなことでも、実現させてしまいそうな雰囲気が村田にはある。エンダム戦はもちろん、その後への期待も高まるばかりだ。