TKO負け・山中慎介「タオル投入」の深層

2017年08月17日 11時00分

ラッシュを受け、無防備になった山中(右)はネリの右を顔面に食らった

 まさかの連続だ。WBC世界バンタム級タイトルマッチ(15日、島津アリーナ京都)で、王者の山中慎介(34=帝拳)は同級1位ルイス・ネリ(22=メキシコ)に4回2分29秒、TKOで敗れた。元WBA世界ライトフライ級王者の具志堅用高氏(62)が持つ世界王座の国内連続防衛記録「13」に並ぶことはできなかったが、セコンドのタオル投入で決着したことに帝拳ジムの本田明彦会長(69)が激怒する意外な展開に…。いったい、どういうことなのか?「予期せぬ決着」の深層に迫った。

 2011年11月に始まった長期政権は衝撃の形で終わりを告げた。4回、ロープ際でメッタ打ちにされると、セコンドの大和心トレーナー(42)はタオルを投げ込んだ。背中側から投げ込まれたことに気づかないレフェリーは試合を止めない。たまらず同トレーナーはリングに入り、試合をストップさせた。

 ロープがなければ腰から崩れ落ちそうにも見えたが…帝拳ジムの本田会長はこの判断に激怒した。「いつもならタオルを投入するかを聞いてくるのに、それをしなかった。意識も飛んでないし、あそこをしのいで後半にKOする、というのが狙いだった。最悪の判断」

 タオル投入は、赤コーナーから至近距離にいたジムの会長の指示を仰がないという、まさかの独断だった。とはいえ舞台裏では、メッタ打ちにされるのを目の当たりにして反射的にタオルを投げ入れても仕方ないような状況が揃っていた。

 試合前に発売されたボクシングメディアの最高権威、米「リング誌」には「シンスケ・ヤマナカの時代の終わりは近いかもしれない。それは次の試合になる可能性もある」という記事が掲載された(本紙既報)。

 さらに今回は「指名試合をやる必要はなかったけど、記録がかかった試合だからこそ、これだけ強い1位の相手(ネリ)を選んだ。記録をつくるために簡単に勝てるような選手とやって勝ったところで、そんなことは何も評価されない」(本田会長)というマッチメーク。あえて最強挑戦者を選んだだけに、下馬評では「6―4」か「7―3」でネリが有利だった。このため周囲のスタッフには試合前、かつてないほどのピリピリムードが漂っていたのだ。

 こうした要素があった上でのメッタ打ちに「大和は優しい性格だから、大事な選手がヤバいと思って一瞬、魔が差してしまったのか…」(本田会長)。それが「まさか」のタオル投入につながってしまったとも考えられる。陣営による予期せぬ決着に、帝拳プロモーションの浜田剛史代表(56)も「俺の指示不足かな。山中は効いてなかった」と表情は複雑だった。

 実際、試合後の山中は涙を流してプロ初黒星にショックを隠せなかったものの「負けておいてこんなこと言うのもなんですけど、左も当たっていたし、大したことないな、これならいけると思っていた。自分としては大丈夫だった。効いていなかった」と話し、ダメージがあったことを否定。「セコンドを心配させてしまった」と長年付き添ってくれた大和トレーナーの胸中をおもんぱかったが、まだまだやれた…と言いたげだった。「コンディションも悪くなかった」との本人の言葉を裏付けるように、本田会長も「今日は絶好調だった。もし調子が悪かったら(ネリに)倒されている」と話した。

 何より、このシーンを目の前で見ていたレフェリーには止める気配が全くなかった。昨年9月の強敵アンセルモ・モレノ(32=パナマ)戦ではダウンの応酬となった激闘を制してV11を達成しただけに、まだまだ巻き返しの可能性はあったのかもしれない。

 山中の進退について本田会長は「本人に任せる」とした。予期せぬ形で長期政権に終止符が打たれた「神の左」はどんな決断を下すのか。