WBC世界バンタム級王者の山中慎介(34=帝拳)が9日、V13戦(15日、島津アリーナ京都)に向けて都内のジムで練習を公開した。勝てば元WBA世界ライトフライ級王者の具志堅用高氏(62)の持つ連続防衛国内記録に並ぶ大一番。一方で、ボクシング界で世界最高の権威を誇るメディアが、何とも不穏な情報を掲載していることが明らかになった。

 山中はランキング1位の最強挑戦者、ルイス・ネリ(22=メキシコ)の陣営も見守る中で2ラウンドのスパーリングを披露。「調子がいまひとつでなかなか上がらない時期もあったけど、10日ほど前に腰のあたりがスカッとするものがあった。自信を持って試合に臨める状態をつくれたのは大きい」と好調ぶりをアピールした。

 だが「ボクシング界のバイブル」の異名を持ち、メディアの中では最高権威とされる米「リング誌」9月号(雑誌版)にはこんな衝撃的な記事が掲載された。

「シンスケ・ヤマナカの時代の終わりは近いかもしれない。それは次の試合になる可能性もある」
 まるでネリ戦での防衛失敗&王座陥落を予告するかのような記事。何とも不穏な内容だが…これは山中が強く望む「より強い相手との対戦」を実現させたからにほかならない。

 具志堅氏の記録に並ぶことができれば、日本ボクシング界では約37年ぶりの快挙。最近では内山高志氏(37)や長谷川穂積氏(36)が防衛回数を2桁まで伸ばしながら、追いつくことができなかっただけに、記録達成のために安易な相手を選び、さらに前人未到の「V14」につなげるのも一つのやり方だ。

 しかし所属の帝拳ジムはその手法を取らないし、何より山中本人もそれを絶対に望まない。しかも、今回の試合が決まった後は、取材の場では100%の確率で「具志堅」絡みの質問をされ、記録を意識せざるを得ない状況になっている。それが「ネリという(最強の)相手を選んでくれたおかげで、記録を意識しないでこの挑戦者に勝つんだ、ということだけに集中することができた」(山中)。

 米「リング誌」で、山中はバンタム級の王座に君臨。「パウンド・フォー・パウンド」(階級差がないと仮定した場合のランキング)では日本人で唯一、10位にランクインしている。

 そんな名王者が勝って当たり前の相手との対戦では、モチベーションも上がらない上に記録のことばかり考えさせられることになる。結果として足をすくわれることになりかねない。それよりも、ボクシングメディア最高権威がここまで危機感をあおるほどの相手を破って快挙達成となったほうが、より記録の価値も高まるというわけだ。

 帝拳ジムの浜田剛史代表(56)は、同時期に現役時代を過ごした具志堅氏のV13について「到底破られるものではないと思っていた」と話す。これに並べば、山中はいよいよ神の領域に達する。それを決めるのは、もちろん「神の左」だ。