ボクシングのダブル世界戦(23日、東京・大田区総合体育館)、WBA世界ライトフライ級王者の田口良一(30=ワタナベ)は同級1位ロベルト・バレラ(24=コロンビア)を9回24秒、TKOで破ってV6に成功。さらなる防衛ロードに向けて、偉大な名王者たちから「金言」を授かった。

 圧巻の勝利だった。「先手を取りたい」と話していた通り、1回から、すさまじい勢いでバレラに襲いかかる。これまで6度の世界戦では見られなかった光景だ。

 内容も横綱相撲。左投げのキャッチボールトレーニングで磨いた左ボディーを次々とめり込ませた。ダウンこそ奪えなかったものの、最後はバレラが戦意、スタミナともにすっかり失い、レフェリーが試合を止めた。

 2014年大みそかに王座に就いて以来、重ねた防衛数は「6」に。継続中の記録としては、来月にV13戦を控えるWBC世界バンタム級王者・山中慎介(34=帝拳)に次いで2位。歴代でも輪島功一氏(74)、川島郭志氏(47)といった名王者たちに並んだ。

 進化を続ける王者は、さらなる記録の積み重ねが期待できるが、ポイントは何か。田口のV6戦でテレビ解説を務め、リングサイドで見守った2桁防衛経験者は、こんな金言を贈る。

 まずはジムの先輩で、元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者(11回防衛)の内山高志(37)は「田口ももう30歳だし、今後は年齢からくる“衰え”が出てくるかもしれない。それとどううまく付き合っていくか」とアドバイスする。これを聞いた田口は「衰えはまだ感じないですけど、強いて言うなら走るのが遅くなったかな?」というが、いずれぶつかるであろう年齢の壁への対処の仕方は参考になった様子だ。

 さらにWBC世界バンタム級王座を10回防衛、その後にフェザー級とスーパーバンタム級王者にもなった長谷川穂積氏(36)は「やっぱりビッグマッチをやること。強い相手とやったほうが『強い自分』を見せられる」と話した。

 この日はWBO世界ライトフライ級王者の田中恒成(22=畑中)が駆けつけ、試合後にはリングに上がって統一戦の実現をアピール。田口は「今日勝って、やっと統一戦をやりたいと言える。すごく面白い試合になると思います」と受けて立つ構えだ。

 実は田口には「自分って本当に強い相手とやったのかな?って思うんです。こんなこと言うと、これまで戦った人に失礼かもしれないですけど…」というジレンマがある。バレラはランク1位。最強の挑戦者だったが、全く寄せつけない完勝は“安全パイ”を選んで勝ったようにも思われる可能性を指摘され「そうなんですよね…」とポツリ。悩みは深まっていたが「田中選手と統一戦をやって、勝てば胸を張ることができると思うんです」という絶好のモチベーションができた。長谷川氏の言葉は、まさに“我が意を得た”ものだ。

 中継するテレビ東京は、これまで「ツヨカワ(強くてかわいい)」の愛称をしつこく連呼してきたが、この日のインタビューでは使われなかった。もう「かわいい」は必要ない。そう思わせる風格が漂っている。