山中慎介WBC世界バンタム級V12 次戦困った…挑戦者いない

2017年03月03日 16時30分

V12を達成した山中はファンから熱狂的な祝福を受けた

 WBC世界バンタム級タイトルマッチ(2日、東京・両国国技館)は王者の山中慎介(34=帝拳)が同級6位のカルロス・カールソン(26=メキシコ)に7回57秒、TKO勝ちで12度目の防衛に成功した。次戦はいよいよ元WBA世界ライトフライ級王者、具志堅用高氏(61)の持つ連続防衛日本記録「13」に挑む。ボクシング界だけでなく、日本中が注目するビッグマッチになるはずだが、取り巻く状況は簡単ではない。「神の左」の前に立ちはだかる、これまでにない“大敵”とは――。

 

 7回開始直後だ。山中の左の連打をくらって尻もちをついたカールソンに、もう立ち上がる力は残っていないように思われた。それでも必死の形相でファイティングポーズを取った挑戦者に対し、王者の「神の左」が炸裂。この試合5度目のダウンに、レフェリーはカウントせずに試合を止めた。山中はTKOで防衛を果たし、具志堅氏が1980年に樹立した記録についに王手をかけた。

 

 時折右を打ち込まれ、足元がぐらつくシーンもあったことから王者は「良さも悪さも出た試合」と反省の言葉を口にした。今回の勝利で否が応にも意識せざるを得なくなった「V13」については「次(の試合)も結果で応えるだけ。皆さんが楽しんでくれれば結果はついてくる」と勝利を約束した。

 

 最近のペースだと次戦は秋ごろの見込みだが、ここに大きな問題が立ちはだかる。ズバリ、相手がいないのだ。

 

 昨年9月のV11戦で元WBA世界バンタム級スーパー王者のアンセルモ・モレノ(31=パナマ)を大激闘の末にリングに沈めた「神の左」は、この日もカールソンを5度倒した。その威力が世界中に知れ渡っていることももちろんだが、対戦相手にとって「決め手のあるサウスポー」を想定できるスパーリングパートナー探しは困難を極める。これが対戦を敬遠される大きな理由だ。

 

 ただ、「V13」に並ぶのは多くのファンや関係者が望むこと。それだけに次戦ぐらいは“安易な挑戦者”を選んでも世論は納得しそうなものだが、帝拳ジムの本田明彦会長(69)は「そういう選び方は絶対にしない。『13』だからこそ、それ(タイ記録樹立)にふさわしい相手とやらせる」とあくまで“ガチ路線”を貫く意向だ。

 

 その筆頭候補と言われるのはWBCバンタム級シルバー王者のルイス・ネリー(メキシコ)だが、本田会長によると「今回も声をかけたけど断られた」。困ったことに、ネリーとカールソンはメキシコ・ティファナ出身で同郷。「神の左」の恐怖が耳に入れば、さらに対戦を嫌がられることも考えられる。

 

 山中の次戦が「指名試合」ならWBCが「指名挑戦者」でもあるネリーとの対戦を義務付けるため、山中陣営による相手探しの手間は省ける。だが、指名試合は次々戦のV14戦になる見込みだ。

 

 今回の試合を迎えるにあたり、WBCランカーで世界挑戦資格のある15位以内は、カールソン以外すべて断られた。ならば他団体王者との統一戦といきたいところだが、ケガで中止になった昨年大みそかの大森将平(24=ウォズ)戦のファイトマネーが40万ドル(約4600万円)だったIBF同級王者のリー・ハスキンス(33=英国)は、山中との統一戦については倍額に近い70万ドル(約8000万円)を要求。そうなるとビジネスとして成り立たず、現実味は薄い。要は“同格”であるはずの他団体王者でさえ「神の左」から逃げている状況なのだ。

 

 勝つほどにマッチメークが困難になるのは皮肉な話だが、それを乗り越えて真の「神」の領域に達してほしいものだ。