WBO世界スーパーフライ級王者の井上尚弥(23=大橋)が、9月4日に神奈川・スカイアリーナ座間で、同級3位ペッチバンボーン・ゴーキャットジム(30=タイ)と3度目の防衛戦を行うことが18日、発表された。所属ジムの大橋秀行会長(51)は「勝てば、後にはビッグマッチが控えている」と断言。“軽量級最強王者決定戦”に向けた壮大な「1年計画」があることを明らかにした。

 この日、都内で会見した井上は「拳も良くなって、初めてタイトル(2013年8月、日本ライトフライ級王座)を取った会場で試合ができてうれしい」と、地元で行う世界戦への抱負を笑顔で話した。5月のV2戦は序盤で右拳を痛めた影響で判定勝利だったが、今度は「まずは勝ちに徹して、流れの中でチャンスがあればKOを狙いたい」とKO防衛へのこだわりを示した。

 それは、この試合の先に、かねて待望されてきた“軽量級最強の男”ローマン・ゴンサレス(29=ニカラグア)とのスーパーファイトの実現が控えているからだ。

 最近2年半ほどはフライ級を主戦場にしていた「ロマゴン」は、14年9月にWBCフライ級王者になった際「日本人ではイノウエとやりたい」と“指名”した。この時点でWBCライトフライ級王者だった井上は、同年末に現在のWBOスーパーフライ級王座を獲得。“飛び級”でクラスを上げたため、なかなか階級が合わなかった。

 そうした中で12日、ロマゴンが9月10日に米国で、WBCスーパーフライ級王者のカルロス・クアドラス(27=メキシコ)に挑むことが発表された。井上は「やっと同じ階級になった。来年に統一戦ができたら面白いですね」。

 実際、井上の希望に沿った計画が進行中だ。順当にV3を達成すれば、次戦は年末に国内で、その次の試合は米国の「ロマゴンと同じ興行で」(大橋会長)行う方向。これは井上の“顔見せ”が目的になる。いくら日本で「怪物」「最強」の名をほしいままにしても、本場での実績がなければ、世界では「ロマゴンがよく分からないアジア人と戦う」と受け止められる。

 それよりも米国のリングで、ファンや関係者、テレビの視聴者に一度はド派手なKOショーを披露して、“軽量級最強王者決定戦”の機運を高めようというわけだ。

 ロマゴンがスーパーフライ級王者になり、井上とともに防衛を重ねていけば、来夏~秋ごろに実現する見込み。壮大な「1年計画」の第1弾となる試合だけに、負けるわけにはいかない。日本の怪物王者には「ロマゴンに勝てる」と思わせる強さを披露することも求められる。