WBC世界バンタム級王者の山中慎介(33=帝拳)が異例の“口撃”に出た。V10戦(4日、島津アリーナ京都)に向け2日に行われた調印式の場で、挑戦者の同級3位リボリオ・ソリス(33=ベネズエラ)に対して「ガラスのアゴはお前や!」とピシャリ。珍しい挑発的な発言の裏には、何が隠されているのか。

 調印式後に行われた記者会見。ソリスが「ヤマナカは『ガラスのアゴ』」と挑発していることについて聞かれた山中は「ソリスらしくて、いいんじゃないですかね」と言った後、強烈な言葉を発した。

「自分は防衛戦でダウンしたことがない。それを割れる(倒せる)パワーがあるんですかね? 当日『ガラス』になるのはソリスのほうだと思います」

 アゴを打ち砕いてのKO予告。「神の左」と称される左ストレートで幾多の強敵を葬ってきたリング上とは違い、日頃は紳士的な王者にしては珍しい挑発的な発言だ。突然の“変身”には何があるのか。

 帝拳ジムの浜田剛史代表(55)は「今日はたくさんの記者の方が東京から来てくれていたから、リップサービスだったんじゃないですかね」と説明した。この「リップサービス」は、近い将来の米国進出へ向けての“予行演習”でもある。

 本場ラスベガスなどでの試合では、試合前の会見などの場で対戦者同士が罵詈雑言を浴びせ合うことは珍しくない。

 時には度が過ぎて取っ組み合いに発展してしまうこともある。中には本当にお互いを毛嫌いしているケースもあるとはいえ、こうした場での挑発合戦はプロボクサーとしての「仕事」の一環だ。

 米国でのビッグマッチの多くはペイ・パー・ビュー(PPV)で放送される。こうしたシーンがメディアで報じられることで注目度が高まると、視聴者が増え、その分ファイトマネーも増える。このため、自ら進んでアピールして商品価値を上げることが求められるのだが、山中も今後は統一戦など海外でのビッグマッチを熱望している。それが実現した際のイメージトレーニングを徐々に始めたというわけだ。

 京都の隣県の滋賀出身とあって、当日は多数の応援が駆けつける凱旋マッチ。判定勝利だった昨年9月のV9戦の反省を踏まえ「強い姿を見せて、しっかり差をつけて勝ちます」と、口だけではなく拳でもしっかりアピールすることを誓った。