【中国・上海27日発】目指すは「アジアの顔」だ。ロンドン五輪ボクシング金メダリストの村田諒太(30=帝拳)がプロ9戦目となるWBCスペイン語圏ミドル級王者ガストン・アレハンドロ・ベガ(32=アルゼンチン)との同級10回戦(30日)に向けて当地入りした。今回は村田をプロモートするトップランク社による初の上海イベント。村田が“ポストパッキャオ”になれるか、重要な試合になる。

 村田にとっては、約2年前のマカオに続いて2度目となるアジア圏での試合。「上海ではボクシングの興行は初めてのようですし、見に来た方におもしろいと思われるような試合がしたい」と意気込みを語った。

 実際には小規模な試合は行われた実績があるが、トップランク社によるイベントは今回が初めて。マカオ、フィリピン、シンガポールなど積極的にアジアに進出する同社の“新規開拓地”でのお披露目興行で、ボスのボブ・アラム氏(84)も直々に来場する重要なイベントだ。

 それだけに村田にとっても重要度は高い。「僕はアジア人ですし、これからもアジアで試合をすることがあるかもしれない」と村田は以前から話している。アジアのボクシング史上最高ボクサー、マニー・パッキャオ(37=フィリピン)は4月の次戦での引退を発表。30日のメーンイベンターを務める北京&ロンドン五輪金メダリストで地元中国の英雄、鄒市明(ゾウ・シミン)も34歳となった。世代交代の気配が漂っており、村田がトップランク社の次の「アジアの顔」となる大きなチャンスなのだ。

 だが、万が一にも「落第」の烙印を押されるような凡戦をすれば状況は一変。今年は4試合こなすことを目指し、可能ならば年内に世界挑戦という「青写真」も吹っ飛んでしまいかねない。

「今年は勝負の年になると思うので、いいスタートを切れるようにしたい」。村田の言う「いいスタート」が、アラム氏を満足させ、現地の観客をうならせるKO勝利が絶対条件となることは言うまでもない。

 12日に30歳となったが「言われるまで忘れてました」と一笑に付すなど、体力、気力ともに充実している。「内山さん(高志=WBAスーパーフェザー級スーパー王者)は今年37歳になるし、山中先輩(慎介=WBCバンタム級王者)も34歳になるけど、衰え知らずで活躍されている。自分も見習って活躍できるようにしたい」

 三十路に入った金メダリストが「アジアの顔」になる勝利を手にできるか。