モンスターに追い風か。ボクシング界の〝問題児〟ジョンリール・カシメロ(フィリピン)がついにWBO世界バンタム級王座を剥奪され、暫定王者だったポール・バトラー(英国)が正規王座に就くことが決定。これによりWBAスーパー&IBF王者・井上尚弥(大橋)の「4団体統一」へ向け、一気に視界が晴れてきた。

 カシメロは先月22日に英リバプールで予定されていたバトラーとの防衛戦前、減量目的で禁止されているサウナを使用して試合は中止。自身のユーチューブ映像で発覚というお粗末なものだった。失態は今回だけではない。昨年8月、WBC同級王者ノニト・ドネア(フィリピン)との試合前にドーピング検査を拒否し、ドネアは試合をキャンセル。また、同12月にはバトラーとドバイで対戦予定だったが、計量直前に胃腸炎で緊急入院して試合は消滅し、1年間で3回もトラブルを起こしている。

 カシメロの度重なる失態に対し、井上は今年1月のイベントで「戦う興味がなくなったというか、ちょっとシラけた」と発言。現在は6月7日に行われるドネアとの3団体統一戦(さいたまスーパーアリーナ)へ向けてスパーリングを開始しているが、その先にある「4団体統一」を考えると、カシメロ王座剥奪は〝渡りに船〟といっていい。

 米専門誌「ザ・リング」はバトラーの「すぐに防衛を果たせたら最高だが、(井上VSドネアの)勝者と直接対決することもある」というコメントを掲載した上で「その勝者と対戦すれば、キャリア最高のファイトマネーを得られ、文句なしのチャンピオンが誕生する。それを彼は十分に理解している」と伝えている。仮に井上が3団体統一王者となった場合、バトラーにとっては手ごわい相手だが巨額マネーをつかめるなら戦わない手はない。

 一方、バトラーは所属するプロモート会社「プロベラム」を通して「WBOのベルトを巻いて、ボクシング界の最高の階級の一つでビッグマッチをする準備ができた」と意気込んでいる。このプロモーターがドネアと同じという点も大きい。これなら4団体統一戦へ向けた交渉に支障はないだろう。

 井上にとって長らく障壁だった〝カシメロ問題〟が解決。いよいよ日本ボクシング界初の偉業が現実味を帯びてきた。