「最強の敵」の本当の怖さとは――。IBF世界ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(39=カザフスタン)が6日、WBA同級スーパー王者・村田諒太(36=帝拳)との王座統一戦(9日、さいたまスーパーアリーナ)を前に練習を公開した。本紙はゴロフキンと対戦経験がある2人の日本人を緊急取材。両者はパンチの威力を〝あのボクサー〟に例えて証言し、さらに試合前日の恐怖体験を告白した。
いよいよ「GGG(トリプルG)」が日本でベールを脱ぐ。この日、ゴロフキンは都内の帝拳ジムでロープワークやシャドーなど約45分の練習をこなし、初上陸した日本の印象を「天気も人々も素晴らしい。気配りやサービス。これまで私が経験した中で最高だと思います」と絶賛。日本人について「何事にも尊敬を持って接しているのがわかります。伝統や文化を感じて、とても居心地がいいです」と敬意を払った。
ゴロフキンを「紳士」「礼儀正しい」と人間性を褒めたたえる関係者は多い。ただ、ひとたびリングに上がると無敵の強さを誇る。GGGと対戦した2人の日本人はパンチの質を「モンスター」ことWBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)に例えた。12年5月に戦って3ラウンド(R)TKO負けを喫した元東洋太平洋&元日本ミドル王者・淵上誠氏は「やった人しか分からないと思うけど、見た目以上にパンチが硬い。スタイルは違うけど、パンチの質は井上君と似ている」と証言する。
また、13年3月に3RKO負けした元WBA世界スーパーウエルター級暫定王者・石田順裕氏は「石で殴られたような感覚。分かりやすくイメージしてもらうなら井上君かな。ガードの上からでも倒してしまうパワーがあった」。つまり、井上のパンチにミドル級の体重をプラスした破壊力ということになる。
恐ろしさはこれだけではない。淵上氏は「彼の優しさが怖かった」と試合前日の〝恐怖体験〟を回想する。公開計量で対峙した直後、体中に戦慄が走ったという。「僕は戦う覚悟ができていたので、にらみ合った瞬間は全く怖くなかった。でも、その後に彼は穏やかな表情で両手で握手してきたんです。それがメチャクチャ怖くて…。ガンをつけたり、威嚇するのは同じ力量の人にやること。僕を見て『勝てる』って感じたんでしょう。その王者としての余裕がとても恐ろしかった」
戦う前に圧倒的な力の差を感じた淵上氏は改めて「強くて優しい、人間としてもチャンピオン」と脱帽した。8日の計量ではゴロフキンの肉体だけでなく、態度にも注目が集まりそうだ。