注目女子ボクサーの〝本音〟とは――。ボクシング女子日本ミニマム級王者の鈴木なな子(22=三迫)が新たなスタートラインに立つ。昨年12月に所属ジムで女子初となる同王座を奪取し「在学中にタイトル」の目標を達成。今春に大学を卒業し、就職は考えずボクサー一本で勝負を挑む。これまで「女子大生ボクサー」と呼ばれる中で抱いていた感情や、あの金メダリストへの思い、世界王者への野望などを包み隠さず語った。


 ――有言実行で在学中にタイトルを獲得した

 鈴木 タイトル戦の緊張度はこれまでと全然違っていました。後から見返してもめちゃくちゃ表情が硬かったし、ジムの仲間にもそう言われましたね。今までの緊張といえば宙に浮いているとか、足に力が入らない感じだったんだけど、今回は負けたらやばいというプレッシャーもあったのかな。

 ――「女子大生ボクサー」として注目されてきた部分もある

 鈴木 不思議というか、変な感じはしていました。女子でボクシングやっている人はプロは少ないだけで、アマチュアだったらいっぱいいる。それほど騒がれることかなと。自分としては普通だったから。

 ――違和感はあったか

 鈴木 普通のことで「女子大生ボクサー」と書く媒体もありましたから。まあ、ボクシング自体をあまり女の人はやっていないからかもしれないから、珍しいのかもしれないですね。

 ――女子ボクサーを珍しがる人は多い。昨年はテレビ番組で張本勲氏の発言が波紋を広げた

 鈴木 ほとんどの人がそういう考え方だし、仕方ないんじゃないですか。私もジムのキッズクラスの小さな女の子が殴られているのを見たら「女の子なのに」と思っちゃいます。でも、それはしょうがないなと思いますね。

 ――昨年の東京五輪は入江聖奈(日体大)が金メダルに輝いた

 鈴木 同じくらいの年代の人が、ああやって世界で戦っている姿を見ると刺激をもらいます。私も頑張ろうと思いますね。

 ――今後は就職はせずボクシング一本

 鈴木 アルバイトで生計を立てながらですね。就職したらボクシングができなくなってしまうと思う。仕事をしていたら試合前とかいきなり「2週間休みます」というのは難しいと思うんです。

 ――周囲に相談は

 鈴木 してないです。普段は迷ったりはしますけど、就職は迷わなかった。重要なことは自分で決めますね。

 ――不安はないのか

 鈴木 ワクワクと不安が半分ですね。同年代の子たちとは全然違うスタイルになるから、どんな感じになるのか全然想像がつかないですけど。でも、とりあえずやってみようと思って。楽しみですね。どこまで自分が行けるのか、やってみなければ分からないから。

 ――狙う先は

 鈴木 まずは東洋太平洋。2、3年スパンで再来年とか。その時の状況によりますけど、来年とかでもいいですよね。

 ――その後は世界

 鈴木 とりあえず今年はしっかり防衛をしたい。着実に実力をつけて、段階はちゃんと踏みたいですね。アマエリートの人はバンッて行けると思うんですが、私はアマチュアとかをやっていないので。しっかり場数を踏んでキャリアを積んでいきたいです。

 ――なるほど

 鈴木 自分がどこまで伸びているか分からないですけどね。遅くても30歳までに世界王者になりたいですね。自分ができるなら、早い分には全然いいと思います。

 ――ちなみに、卒業記念で何かしたか

 鈴木(東京の)御岳山(みたけさん)に登りました。登山は好きなんでボクシングをやっていても趣味で登りたいです。これまでも富士山、高尾山などに登りました。大学の初期のころは登山でスイスにも行きました。コロナで状況は分からないけど、また行きたいですね。


 ☆すずき・ななこ 1999年7月8日生まれ。東京・板橋区出身。4歳でフルコンタクト空手を始め、その後ボクシングに転向。ワタナベジムに入門し2017年5月(高校3年時)にプロデビュー。立大に進学し、学業との両立などのため20年1月に三迫ジムに移籍。昨年12月に日本女子ミニマム級王者となる。父、母、兄の4人家族。趣味は登山、散歩、グルメなお店探し。戦績は8戦6勝(1KO)2敗。158センチ。