ボクシング界に大激震だ。新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の世界的な感染拡大による外国人の入国停止措置を受けて、今月に予定されていたWBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太(35=帝拳)、WBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(32=志成)の統一戦が相次いで中止となった。それぞれの陣営は日程の再調整を相手側と進める構えだが、今回のビッグマッチ中止はリング内外に影響を及ぼしそうだ。

 村田が所属する帝拳ジムは3日にIBF世界ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との統一戦(29日、さいたまスーパーアリーナ)の延期を発表。村田は自身のインスタグラムで「感染防止のため、早急に決定した政府の対応に賛同し、支持いたします。(中略)私個人としては今回の事は真に自分の人生を愛するための試練だと受け止めております」と前を向いた。

 村田陣営は来春の開催を目指す中、メガファイトがいったん〝白紙〟となった影響はあるのか。中量級の元東洋太平洋王者は「今回は突然の中止というより『流れるかも』という心配の中での延期。ある程度の覚悟は持っていたと思う」と精神面のダメージは少ないと見る。ただ、一部では村田のコンディションを懸念する声も上がっている。

 ある国内外ボクシング関係者は「ゴロフキンより村田選手の方が影響が大きいのでは。村田選手がゴロフキンに挑戦する図式。村田選手の方がより追い込んで体力をつくってスパーリングなどをやっていたと思う。スパーも激しさを増せば頭部などへのダメージも確実に蓄積する。(新たな日程まで)十分な準備期間を与えられるとは思うが、また一から追い込んでとなると負担は大きい」と分析。ズバリ〝村田不利〟との見方を示した。

 一方で、一翔の所属ジムもIBF世界スーパーフライ級王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)との統一戦(日、大田区総合体育館)の中止を発表。改めて来年の開催を目指していく。陣営の関係者は「(本人も)切り替えるのは難しいでしょう」と一翔の心中をおもんぱかったが、こちらは村田とは異なる事情を抱えている。中止の影響が、リング外まで波及する可能性があるというのだ。

 昨今のボクシング興行は世界的に見てもテレビからネット配信に主流が移りつつある。ネット系企業の資金力も大きな要因で、村田は「Amazonプライムビデオ」(国内のみ)、予定通り日に行われるWBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)の防衛戦は「ひかりTV」のペイ・パー・ビュー(PPV)などで中継される。そんな中で、井岡はTBS系列での中継となっていた。

 元テレビ局関係者は「ネットなら急な編成でもそれほど影響はないが、地上波となれば年末の1時間の枠が空くのは大きな痛手。1か月を切った段階となれば、番組編成は大混乱でしょう」と分析する。コロナ禍では、今後も興行の突然の中止や延期があり得るだけに「こうした事情からも、ボクシングの〝テレビ離れ〟に拍車がかかるかもしれない」(同関係者)。今後の中継態勢にも影響を及ぼす可能性を指摘した。

 いずれにせよ、村田や一翔の仕切り直しの一戦が実現すれば、注目カードであることに変わりはない。試練を乗り越えてファンの期待に応えることができるか。