WBC世界ミドル級8位の村田諒太(29=帝拳)が5月1日に東京・大田区総合体育館でWBO同級14位のダグラス・ダミアオ・アタイデ(24=ブラジル)とプロ7戦目(ノンタイトル10回戦)を行うことが発表された。世界ランカーとの対戦は初。ここ2試合、判定勝ちが続いているロンドン五輪金メダリストは、オフに受けた“屈辱”をバネにKO勝利することを誓った。

「もともと、おとなしい性格じゃない。ちょっと汚いことをしてでも勝ってやろう、という人間ですから」。会見では、村田の口から予想外の言葉が飛び出した。もちろん「汚い」とはいっても「ルールの中で許されていることで」(村田)と説明したように、反則をするわけではない。それでもクリーンなイメージから懸け離れた表現に至ったのは、オフの出来事がきっかけになっている。

「トークショーでのことなんですけど、オバちゃんに『2試合引き分けが続いちゃったねえ』と言われたんですよ」

 昨年9月と12月の試合はKOを逃したが、いずれも3―0の判定勝ちを収めている。ボクシングファンなら明らかに完勝とわかる内容。だが、おそらくボクシングにはそれほど詳しくないと推測されるこの婦人は「KO決着以外は引き分けになる」と思い込んでいたようなのだ。

 どんなプロスポーツ選手でもこんな言われ方をしたら、カチンときてもおかしくない。この言葉を聞いた村田もその瞬間は「え?」と思いながらも、大切なことに気付かされた。

「コアなボクシングファンだけを相手にするならともかく、こういう方でもわかってもらえるような試合をしなければいけない。そのためには、やっぱりKOで勝つしかないんですよね」

 ロンドン五輪ではボクシングで48年ぶりとなる金メダルを獲得し、現在はNTTドコモのCMにも出演しているだけに、世間一般的にも村田の顔は、広く知れ渡っている。前出の婦人のように「ルールはよくわからないが応援している」という人も増加。ボクシング人気の裾野を広げるためには、こうしたごく一般の層にこそアピールする必要があると痛感させられたわけだ。

 アマチュア時代に着用していたヘッドギアがなくなり、グローブも小さくなってパンチの威力が増したことから「一発もらったら終わり」という気持ちが強くなっていたのも事実。しかしボクシングの醍醐味は殴って倒すこと。原点に返った村田は3試合ぶりのKO勝利で、自分の目を覚めさせてくれた「オバちゃん」を納得させるつもりだ。