不屈の男が再び走り始めた。ボクシングの元2階級王者・八重樫東(32=大橋)が6日、現役続行する意向を明らかにした。


 横浜市内のジムで行われた会見は「去就に関する」と案内されていたため、引退の予想もチラホラ。大橋秀行会長(49)が冒頭で「引退会見にお越しいただき、ありがとうございます」と口にしたことで緊張感が漂ったが、八重樫が「スーパーフライ級でもう一度、世界王者を目指して頑張ります」と新階級で3階級制覇に挑むことを明言し、場の空気が変わった。


 八重樫は昨年12月30日、3階級制覇をかけたWBC世界ライトフライ級王座決定戦でペドロ・ゲバラ(25=メキシコ)のボディーに悶絶してKO負け。当時、進退についての明言はなかったが、1か月ほど前から練習を再開した。「子供たちは続行に賛成した」(八重樫)こと、さらに5月ごろに再起戦を行うメドがついたため、この日の発表となったわけだ。

 ミニマム級とフライ級で世界王座獲得。一度はその間のLフライ級に落とし、今度はSフライ級に上げる。簡単な階級変更ではないが、大橋会長は「八重樫は減量するよりも、体を重くした方が強くなるタイプ」と今回の経緯を説明した。


 とはいえ、Sフライ級は、同じジムにWBO王者の井上尚弥(21)と東洋太平洋王者の松本亮(21)が所属。さらに井上の弟・拓真(19)もこの階級でのベルト取りを狙っている。八重樫としては“身内の敵”との競争に生き残らないことには、3階級制覇どころか世界戦のリングにすら立てない恐れがある。


 昨年9月のローマン・ゴンサレス(27=ニカラグア)戦は、敗れたとはいえ激しい打ち合いを演じ、多くのファンを感動させた。この試合でフライ級王座から陥落し、Lフライ級でも失敗。それでも再びイバラの道を進もうとする八重樫の選択は吉と出るのか。