ボクシングの男子フライ級準決勝(5日、両国国技館)で、田中亮明(27=岐阜・中京高教)はカルロ・パーラム(23=フィリピン)に0―5で判定負け。決勝進出はならなかった。それでも、同級では1960年ローマ五輪の田辺清以来61年ぶりとなる銅メダルを獲得した。

〝男・山根〟こと日本ボクシング連盟第12代目会長の山根明氏(81)は「田中選手を語る上で切っても切れないのは指導者の石原や」と、田中の高校時代の恩師で元東洋太平洋スーパーフライ級王者の石原英康氏の存在を挙げた。

「元プロの石原は選手育成に熱心な男でね。ただ、当時のアマチュア規定では元プロがコーチやセコンドにつくことはできなかった。プロアマ関係なく頑張っている者にチャンスを与えなければならないと、会長になってから規則改正を行って、石原もアマチュア復帰させた。田中兄弟があるのは石原のおかげですよ」

 16年リオ五輪の最終予選で不可解な判定負けを喫した田中は一度は引退も決意したが、山根氏が東京五輪を目指して現役を続行するよう激励したという。

「石原と2人で大阪まで相談に来てね。必ずメダルを取れる実力があると思っていたから『東京五輪を目指せ』と言った」

 今大会でリオ五輪のメダリストを立て続けに撃破して銅メダルを勝ち取った田中に、山根氏は「石原がセコンドについていれば、田中の良さがもっと出たと思う。だけど、一度はボクシングから身を引くことも考えたなかで見事にカムバックした。本人はゴールドが良いだろうが、長い間頑張ってきたことに対する最高の勲章。よく頑張った」と健闘をたたえた。