「世界」からも忘れ去られていた――。ボクシングの3階級制覇王者・亀田興毅(27)が25日、日本ボクシングコミッション(JBC)からUNITEDジム(三好渥義会長)への移籍申請を事実上却下された。国内での活動停止状態から出口が見えない興毅は、昨年11月を最後に試合から遠ざかったまま。今回の措置でボクシング界からは完全に置き去りにされる可能性も出てきた。事実「軽量級世界最強の男」からは、すっかり引退した選手と思われていたから二重のショックだ。

 亀田ジムが活動停止状態になっているため、亀田三兄弟が国内で試合を行うためにはジム移籍が必要。興毅は7月4日に移籍届を提出した。

 だがこの日行われたJBCの資格審査委員会で、同ジム所属のままでは昨年末から失効しているボクサーライセンス更新を認められないと判断された。JBCは移籍先に「世界戦開催の実績があるジム」などの基準を設けていた。UNITEDジムはこの条件を満たさず、興毅とジム会長との連携面、責任の所在の明確化にも不安が残る。

「三好会長がコントロールできるのかという点で非常に憂慮している」(秋山弘志理事長)などの理由から、現状での国内復帰を却下された。

 昨年12月に次男・大毅のIBF世界戦で起きた「負けても防衛」騒動を発端とした亀田家の国内活動停止問題は、またも宙に浮いた格好だ。興毅は「今まで、移籍が認められると信じていました。今はこれ以上の言葉はありません」とのコメントを発表。この日午後9時過ぎに世田谷区内の三兄弟のジムから帰宅したが「今日はあれだけ。また後日」と語るにとどまった。引き続き国内復帰を目指し新たな移籍先を探すことになりそうだが、出口の見えないゴタゴタが続くようでは世間はもちろん、ボクシング界からもすっかり忘れ去られてしまう可能性は否めない。

 それを証明するかのように衝撃的な発言を放ったのが、9月5日のWBC世界フライ級王座戦(代々木第二体育館)で八重樫東(31=大橋)に挑戦するローマン・ゴンサレス(27=ニカラグア)だ。WBA世界ミニマム級、同ライトフライ級王座を制し、39戦全勝33KO。プロアマ含め126戦無敗で「軽量級世界最強」の呼び声が高い。

 八重樫戦で3階級制覇を狙うことになるが、日本人では過去に興毅だけが達成している。しかしゴンサレスは「日本人達成者? …知らない」とバッサリ。日本では「前人未到」ともてはやされた興毅の3階級制覇が、ほぼ同階級の強豪に全く認知されていないとは相当の屈辱だが、実はそれだけではなかった。

 本紙が興毅の3階級制覇を伝えると、ゴンサレスは「彼はもうボクシングを辞めたんじゃないの?」と驚きの発言。興毅が昨年11月から試合をしていないとはいえ、すでに引退したものだと思われていたのだ。完全に「過去の人」なのか、それとも眼中にないだけなのか…。

 JBCサイドは「(国内復帰への)道は開けていると思う」と、条件をクリアする移籍先が見つかれば、ライセンス更新を認める方針を示唆している。だがドタバタ続きで時間が経過すればするほど、興毅が「過去の人」となってしまうのは間違いない。