ダブル世界戦(23日、大阪城ホール)のIBFスーパーバンタム級戦で3階級制覇に挑んだ長谷川穂積(33=真正)は王者キコ・マルチネス(28=スペイン)にTKO負けを喫し、引退が濃厚となった。

 らしく戦い、最後はリングに崩れ落ちた。長谷川は王者マルチネスに7回1分20秒でTKO負け。試合後は右眼窩底(がんかてい)、鼻骨骨折と診断されて入院した。

 WBCバンタム級王座を防衛すること10度。陥落後は“飛び級”で同フェザー級王者ともなり、2階級制覇に成功した。

 かつての長谷川は才能と豊富な練習量で「どうやって相手を殴り倒すかしか考えてない」とも評された。事実バンタム級では12戦中7度がKO勝ちだった。

 一方、この試合前は「初めて頭を使って考えるボクシングをするかも」と話す関係者がいた。進退の懸かった大一番だけにスタイルを変えてくることが予想されたが、フタを開ければ殴り合い。山下正人会長(51)が「(相手のパンチを)外す練習もしたけど、本人が打ち合いたい性格なのか…」と話した戦いぶりで、元WBCバンタム級王者の辰吉丈一郎も「ああすればよかった、というのはあるかもしれないけど、それをしなかったのは長谷川君のプライドじゃないかな」と、同じベルトを巻いた後輩を気遣った。

 試合後の長谷川は「今後のことは、改めて会見させてもらいます」とコメントしたのみで進退は明言しなかった。山下会長は「練習でも完全燃焼したし、本人の気持ちが切れたら終わり」と話し、このまま引退することが濃厚だ。

 国内2人目の3階級制覇はならなかったが、最後まで自分のスタイルを貫き通した偉大なチャンプがリングを去る。