ボクシングのWBO世界スーパーフライ級世界王者・井岡一翔(31=Ambition)のタトゥー問題が議論を呼ぶなか、東京五輪を控える競技団体ではルールによる対応が異なっている。

〝ノールール〟なのはレスリング。数十年前、国際連盟(現・世界連合)が「国によってはタトゥーの文化、習慣があり、否定できない」(当時の関係者)と黙認を決定。日本協会もこれにならい現在に至っている。

 それでも2018年に死去した格闘家の山本KID徳郁さんは、08年北京五輪出場を目指し07年全日本選手権に復帰した際、タトゥーが目立つ両腕にテーピングを巻いて出場した。

「いろいろ言われていたのを知って、徳郁が気を使ったんです。腕を取られて投げられ負けたが、テーピングがなかったら技がかかっていなかったかもしれない」(当時、母校・山梨学院大監督だった高田裕司・日本協会専務理事)。当時は今以上に五輪競技選手のタトゥーになじみがない時代。大会前には内外から多くのクレームがあり、自主的な配慮だったという。

 一方、日本水泳連盟は10年に施行された日本代表選手行動規範でタトゥーを禁止としている。また、日本トライアスロン連合は15年にタトゥーを容認。ただし、すでに入っている選手が隠さなくても参加できるようになるというもの。プールなどの競技会場や、大会独自の趣旨により禁止措置を取ることもあり「タトゥーを入れることのデメリットは訴え続ける」という方針を示している。

 海外では五輪競技でも当たり前のようにタトゥーが見られる時代。それでも文化や社会背景を踏まえ、さらに議論を深める必要がある。