IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ(23日、大阪城ホール)で長谷川穂積(33=真正)が日本人2人目となる3階級制覇を狙う。3年ぶりの世界戦に向け、2階級制覇王者は過去とは違う“水解禁”による調整法で王者キコ・マルチネス(28=スペイン)に挑むという。その意外な理由と効果とは――。

 長谷川はWBCバンタム、フェザー級に続く3本目のベルトを目指す。今回のスーパーバンタム級は過去に手にした王座の間の階級だが「過去最高の減量ができた」と振り返った。

 バンタム級時代は10キロ超体重を減らすことを強いられてきた。長谷川はフェザー級の時も含めて「減量開始とともに水分を取らなくなっていた」と打ち明ける。それが、今回は積極的に水を飲むようになったという。これによる最大のメリットは「試合中に足がつることもなくなると思っている」と説明する。

 バンタム級王座を10度防衛。V13の具志堅用高氏に次ぐ国内2位の連続防衛記録を作った長谷川は、V6戦以降をすべて4回以内にKO勝ち。V8とV9戦は連続での1回勝利だった。5年間にわたって王座に君臨し、なおも早い回に相手を撃破する姿は、まさに「日本のパウンド・フォー・パウンド」。だが、実情は「長期戦になると、いつ足がつるアクシデントに見舞われるかわからない」という恐怖感の裏返し。そのため早期KO決着しかなかったのだ。

 前日計量をパスした後、干からびた体に一気に水分と食べ物を入れる、かつてのスタイルは肉体的負担も大きかった。約3年ぶりの世界戦となる今回、“水解禁”でやっと理想の調整法にめぐり合えたという。

 ただ、IBFは世界タイトルを統括する主要4団体で唯一「当日計量」を義務付けている。試合の日の朝にリミットから10ポンド(約4・5キロ)超オーバーすると失格となる独自のルールは「初の試みなので、やってみないとわからない」(長谷川)と、こちらは手探り状態だ。

 20日の予備検診では王者と初対面。身長で7・5センチ上回ることが判明し「思ったより低い。戦いにはあまり関係ないですけど」と印象を語った。

 日本のボクシング史にその名を刻んだ名ボクサーは、国内2人目の3階級制覇に成功した場合でも、そのままグローブを置く可能性を示唆している。2度のKO陥落を乗り越えて快挙を達成できるか。カギはすべて体調にかかっている。