ボクシングのWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ(31日、東京・大田区総合体育館)は、王者の井岡一翔(31=Ambition)が8ラウンド(R)1分35秒、TKOで元3階級王者で同級1位の挑戦者、田中恒成(25=畑中)を破り、2度目の防衛に成功した。

 幕切れは突然だった。8Rの中盤、挑発するように右手で「来い」という仕草をした一翔に反応するように田中がワンツーを打ち込んだ。

 次の瞬間、一翔の左フックが顔面をとらえると、田中は足がもつれて倒れそうになる。何とか踏みとどまろうとするが、そこに次のパンチを打ち込まれると危険と判断したレフェリーが田中を抱きかかえるようにストップを宣告して試合は終了した。

 3人中、2人の採点が割れた4Rまでは互角といっていい打ち合い。展開が動いたのは5Rだった。

 一翔が鮮やかなカウンターで左フックをヒットさせると田中はたまらずダウンする。

 さらに6Rにも一翔が左フックでダウンを奪うと試合は一方的な展開になるかと思われた。

 だが田中も7Rは左のボディーを執拗に当てて猛反撃する。それでもジャブを小刻みに当てる一翔の方が一枚上手で、このラウンドもジャッジ3人はすべて一翔を支持。そして8Rの一撃で勝負を決めた。

 昨年6月に日本初の4階級制覇を達成し、今回がこの王座の2度目の防衛戦だった一翔はこの田中戦が決まってからは「レベルの違いを見せつける」と言い続けた。

 この日の試合後も「僕からしたら(TKO勝利は)サプライズでも何でもないですけど、口先だけで終わるわけにはいかないので」と話した通りに、格の違いを見せつけた。

 それでも戦いが終われば、わだかまりはない。このコメントのあとには「僕はあとどれだけボクシングをできるかわからないですけど、田中選手はまだまだボクシング界を引っ張っていってくれると思う」とエールを送った。

 プロ16戦目での初黒星となった田中はWBOでミニマム級からフライ級までを3階級制覇した後、今年1月にフライ級王座を返上してSフライ級に転向。この試合に勝てば世界最速での4階級制覇だったが、達成することはできなかった。