WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ(4月6日、東京・大田区総合体育館)で国内最速6戦目での世界奪取を狙う井上尚弥(20=大橋)がWBCフライ級王者の八重樫東(31=同)を飛び越えてメーンイベンターに昇格した。

 大橋ジムの大橋秀行会長(49)が驚きの発表をした。「八重樫の申し出により、尚弥がメーンになりました」

 当日は八重樫もV3戦を行う。ミニマム級と合わせ2階級を制覇した現役王者と今回が6戦目の井上とでは、どちらが格上かは言うまでもない。いくら“怪物”とはいえ、世界初挑戦ボクサーが現役世界王者の後に試合をするのは極めて異例だ。

 これはほかならぬ八重樫自身が「僕も7戦目で(当時の最速記録挑戦に)失敗してるし、歴史的な一戦はゆっくり観戦したい」と大橋会長に申し出たからだ。控室にはモニターも設置されるが、試合直前はバンデージを巻いたり、アップをしたりでじっくり前の試合を見ることはまずできない。それよりも自分の試合を終わらせてから“観客”として偉業をかけたファイトを見たいというわけだ。

 井上も「(メーンを)譲ってくれたことに恥じない試合をしたい」と感謝。王者アドリアン・エルナンデス(28=メキシコ)については「接近戦は相手の土俵なので、自分の距離で戦いたい」。先輩王者が「自分は脇役」とまで言って歴史的舞台のお膳立てをしてくれた。あとは井上が期待に応えるだけだ。