昨年12月のIBF世界スーパーフライ級王座戦で、王者の亀田大毅(25=亀田)が「負けても防衛」となった問題は、日本ボクシングコミッション(JBC)が亀田ジムに対して一連の騒動の原因を作ったとして、事実上の追放処分を下した。これを不服とする亀田側は再審議を申請したが…これが逆に亀田三兄弟の首を絞めることになるかもしれない。

 大毅の王座をめぐってはIBFの立会人が試合前日の会見で「王者が負けた場合は空位」としながら、試合後には「IBFルールに基づき、王座は移動しない」と前言を翻した。興行の主催者である亀田側が「このルールを試合前から知っていた」にもかかわらず、JBCへの報告や公表を行わなかったことを問題視して、JBCは先月7日に亀田ジムの吉井慎次会長と嶋聡マネジャーのライセンス更新を認めない処分を下した。

 これにより亀田三兄弟は国内で活動ができず、事実上の追放処分となった。亀田ジムは東京・世田谷でリニューアルオープンしたが、長男の興毅(27)は「こういう状態やから正直つらい」と先行きが見えない不安を漏らした。「追放」という言葉が先走り、まるで三兄弟のボクサー人生が奪われる危機にひんしているかのような雰囲気にもなっている。だが、この問題のポイントは、三兄弟にはボクサーとしては何ひとつ処分が下されていないということだ。

 処分を決定した倫理・資格審査委員会のメンバーでもあるJBCの秋山弘志理事長は3日、「今回の件に関して選手たちは何も問題を起こしていない。だから現役を続行するための道筋は作ったつもり」と話した。

 委員会では三兄弟の処分を求める声も上がっていた。この“強硬論”を抑え「移籍、またはJBCのライセンスを持たない人間の影響を排除できる人物の会長就任」の条件付きながら、今後もボクサーとして活動できるように導いたのが秋山理事長だったという。

 再審議を行うには亀田側が「再び審議を行うに値する、新たな証拠を提出すること」が条件。仮に再審議となっても「普通に考えれば、あくまで今回の(会長とマネジャーのライセンス更新を認めない)処分がベースとなるでしょう」(秋山理事長)。

 一方で、亀田側とすれば当然処分の撤回、もしくは軽減を求めて行動を起こすのだろう。ただ、委員会のメンバーたちが新たな証拠を「有効」と認めず、再び「ボクサー」として三兄弟にも処分を下すべきとの声を上げたら…。

 法廷闘争を宣言している亀田側の態度がアダとなり、さすがに秋山理事長の“温情”も効果がなくなる。かえって処分が重くなる可能性がないとはいえないのだ。

 再審議請求の証拠提出期限は20日。亀田側はそれでもあくまで「戦闘モード」を続けるのか。