【ボクシング】井上尚弥が11・1ラスベガスで1年ぶり防衛戦 世界で一番〝対戦〟した男が語る“豪打の本質”

2020年10月26日 11時00分

井上は激戦となったノニト・ドネア戦以来のリングに上がる

 約1年ぶりとなる試合で、モンスターはどんなファイトを見せるのか。WBAスーパー&IBF世界バンタム級統一王者の井上尚弥(27=大橋)が、31日(日本時間11月1日)に米ラスベガスでWBO同級1位ジェイソン・モロニー(29=オーストラリア)を相手に注目の防衛戦を行う。井上のプロデビュー前からスパーリングを重ね、その強さを間近で感じてきた元日本ライトフライ&フライ級王者の黒田雅之(34=川崎新田)が本紙の取材に応じ、“豪打の本質”を語った。

 黒田は、井上とモロニー戦に向けたスパーリングを1回行い、他の選手とのスパーリングの機会を合わせると数回、井上の練習を目にする機会があった。そこで感じたことは「今回はすごく気合も入っているし、調子も良さそう。やるべきことは決まっているから(試合が4月から)延期になったことは関係ないと思います」。

 では、モロニー戦はどうなるか。「練習を見ていると、次の試合は早く終わる(倒す)のだろうなとだいたい思います」と前置きした上で「今回もそんな(早期決着の)気がします。遅くても5ラウンドまでには終わるのかな、という気がしないでもないです」。突発的なアクシデントがない限りは前半で決着がつくと予想した。

 その根拠は誰よりも井上のパンチの威力、いや恐ろしさを体感しているからだ。黒田は、2012年に井上のプロテストの相手を務めるなどプロデビュー前からスパーリングを重ねており、通算の“対戦回数”では世界で最も多いとみられる。

 モンスターのパンチの強さを「よく『パンチが硬い』『石みたい』と表現しますし、そういう人はいましたけど、彼の場合は野球の硬球や、拳の大きさの石そのものがそのまま飛んできている感じです」と表現した。

 さらには、スパーリングでは衝撃を減らすために試合用の8オンスより大きい14オンスのサイズのグローブを使うが「ガード越しでも、パンチをもらった時の感覚がグローブのそれじゃないんです」と打ち明ける。14オンスのグローブでヘッドギアを付けた状態ですらそう感じるのだから、8オンスのグローブで直接、顔やアゴ、ボディーに被弾した際の威力は言わずもがなだ。

 黒田が最近、井上とスパーリングをしたのは今月1日。だがここで左上腕の腱を断裂した。ネット上では井上に“破壊”されたとの臆測も飛んだが、本紙が既報したようにアクシデントの真相は「筋肉の炎症」と診断されていた左上腕の腱が「左のボディーフックを打ってガードされた時に切れてしまいました。パンチで切れたのだったら彼の“箔”が上がったかもしれないですけど、自分で打って自分で切ってしまいました」(黒田)ということだった。

 ただ、それだけ1年ぶりとなる井上の豪打爆発に、ファンの期待が高まっている証しでもある。聖地ラスベガスでの一戦では新たな怪物伝説をつくりそうだ。

 ☆くろだ・まさゆき 1986年7月17日生まれ。東京・稲城市出身。高校からボクシングを始め、2005年5月にプロデビュー。翌年に全日本新人王、11年に日本ライトフライ王座、17年には同フライ級王座を獲得する。世界タイトルは13年にWBAフライ級、19年にIBF同級王座に挑戦したものの、いずれも判定負け。167センチ。