昨年の大みそかもボクシングが大盛況だった。世界タイトルマッチが3試合行われ、大阪(ボディメーカーコロシアム)ではWBAライトフライ級王者の井岡一翔(24=井岡)が判定でV3、東京(大田区総合体育館)ではWBCスーパーフェザー級王者三浦隆司(29=帝拳)が豪快なKO勝ちでV2に成功した。

 この2戦も好試合だったが、ベストバウトといえばWBAスーパーフェザー級王者内山高志(34=ワタナベ)のV8戦(大田区)だ。挑戦者の金子大樹(25=横浜光)にダウンを奪われながらも、激しい打ち合いを制して判定勝ち。「これぞボクシング!」という内容で会場を熱狂させた。

 内山は「8度の防衛戦の中では1、2番目にきつい試合だった」と振り返ったが、8連続防衛は日本のジム所属の男子世界王者で歴代4位タイ。この強さの秘密は「105%理論」にある。

 土居進トレーナー(43)によれば「今の状態を『100』としたら、『105』を目指す。それを達成したら、その状態を『100』に設定して、また『105』を目指すというものです」

 内山は防衛回数などの具体的なゴールは設定していないという。なまじ明確な目標を設定すると、達成もしくは実現できなかった時に喪失感が伴うからだが、それより常に現状から1段階上に成長することを目指す。そこにたどり着いたら、さらに一歩先に進んでいくことを繰り返した結果がV8だというわけだ。

 34歳にして肉体的な進化も遂げている。「筋量が増えて代謝が良くなっているので、減量はほとんどしていないはずです」(土居トレーナー)

 今年はいよいよ同級王者・三浦との統一戦実現が待たれる。内山も「気合が入った練習ができる。楽しみな展望です」とヤル気満々。歴史に残る名勝負が生まれそうだ。