埼玉県所沢市内の西埼玉中央病院に勤務しながら東京五輪を目指すミドル級の〝看護師ボクサー〟津端ありさ(27)が6日、東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで〝特訓〟を行った。

 新型コロナウイルス禍の中、緊張感が張り詰める医療現場。その第一線で働く津端は週3回の日勤に1回の夜勤と多忙な勤務をこなしつつ、病院の体育館で練習を続けている。そんな津端の経験不足を補うべく、日本ボクシング連盟はナショナルコーチと強化委員長の協力の下、来年の東京五輪出場枠の獲得に向けた特訓の場を設けた。

 約2時間の練習を終えた津端は、連盟の計らいに「本当にありがたいこと。サンドバッグやリングを使った練習が全くできていなかったので感謝しています」と笑顔を見せた。現在は課題のディフェンスに取り組み、来年の五輪最終予選で出場枠獲得を目指す。

 勤務する病院はコロナ感染者を受け入れていないが「発熱の患者さんが出るとコロナのリスクを考えて対応しないといけない。4、5月は手探りで大変でしたが、最近は慣れてきました」と現状を語る。

 来年夏に延期した東京五輪は開催が危ぶまれている。逼迫した医療現場が大きなカギを握るが、津端は「五輪」と「医療」の両方に携わる立場としてどう考えているのか? その複雑な胸中をこう語った。

「やっぱり医療現場で働いている身としては、正直ホントに開催できるのかな?っていう…。看護師同士や医者の先生と話していても、現場ではどちらかというと難しいのかなっていう話をしています。ただ、五輪を目指す競技者としては、それを考えてしまうと練習に取り組むモチベーションも上がらない。あるかないか分からないけど、あると考えて練習に取り組むようにしています」

 双方をよく知るだけに様々な思いが錯綜する。そんな中、今できることを模索し、夢に向かう津端は最後にこう言った。

「看護師として働きながら目指すことに意味があると思う。応援してくれる医療現場のスタッフの方々にもそうですし、患者さんにも五輪に出ている姿を見てもらって、少しでも皆さんの励み、楽しさにつながってほしい」

 この切なる願いは成就するだろうか。