不退転の決意だ。WBA世界ミドル級王者の村田諒太(33=帝拳)が12月23日に横浜アリーナで同級9位スティーブン・バトラー(24=カナダ)と初防衛戦を行うと16日、発表された。昨年10月の同王座V2戦でロブ・ブラント(29=米国)に敗れたが、7月の再戦で2回TKO勝ちし、王座に返り咲いた。“2度目の初防衛戦”には絶対に負けられない理由が2つある。村田の発言から見えてきたその胸中とは――。

 挑戦者のバトラーは2014年3月にプロデビュー。WBOでは1位にランクされる強豪で、30戦28勝(24KO)1敗1分けのハードパンチャーだ。会見で村田はバトラーの印象を「映像では好戦的で勢いがあった。実際会ってみると、やんちゃな感じで肌質が若い」と報道陣を笑わせた。

 だが、ボクサーとしての夢について「プロとして、まだトップオブトップではないので、そこを目指す」と話すと、表情が一変。夢の実現には避けては通れない「壁」があるからだ。

 絶対に負けられない理由の1つ目になる「壁」とはもちろん、ミドル級最強でWBAスーパー&WBC王者の“カネロ”サウル・アルバレス(29=メキシコ)とIBF王者のゲンナジー・ゴロフキン(37=カザフスタン)の2人のこと。ただこの超ビッグネームとの試合実現には、軽量級とは一桁違うお金が動く。そのことも重々承知している村田は「この階級で世界チャンピオンになるのに大変なのは、僕ではなくプロモートしてくれる人。一回返り咲いたからといって、それが帳消しになるわけじゃない」。自分が崖っ縁にあると思うことで、常に「負けたら終わり」の覚悟で臨んでいるというのだ。

「夢の一歩にしたい」という村田が2人を引っ張り出すためには当然、試合内容が大切。単純に勝つだけではなく、圧倒的な力を見せなければプロモーターの食指も動かない。

 負けられない理由の2つ目は、村田のスパーリングパートナーを何度も務めたパトリック・デイ(27=米国)の存在。デイは12日(日本時間13日)に米シカゴでの試合でKO負け。その後、意識を失って病院に搬送されたものの、頭部に重傷を負い、現在も昏睡状態にある。

 村田は「自分はただ祈ることしかできない。彼の代わりに戦えるわけじゃないし、そんなきれいごとで伝えるものでもない」と神妙な様子で語った。その表情からはデイへの思いがひしひしと伝わってくる上に「祈りの力はすごいものがある」(村田)。自身の夢の実現へ、そして病床の“相棒”と再び拳を交えるため。右の強打と連打でリベンジを果たした7月のブラント戦のような、村田らしい勝利を誓っている。