ビッグプランへの“切符”もゲットだ。WBO世界スーパーフライ級王座決定戦(19日、千葉・幕張メッセ)で同級2位の井岡一翔(30=Reason大貴)は同級1位のアストン・パリクテ(28=フィリピン)に10回1分46秒、TKO勝ちして日本男子初の4階級制覇を達成した。今後は「このベルトを海外への『チケット』にして、他団体の王者とやりたい」と統一戦を熱望したが、ビッグイベントそのものを日本に招致する計画が浮上している。

 勝負の10回、カウンターからの右ストレートをヒットさせ、パリクテの腰が一瞬沈んだのを一翔は見逃さなかった。「ここしかない」と判断し、すかさず右の連打を打ち込むと、パリクテは防戦一方。腰が浮いた状態の相手に一気にラッシュして、レフェリーが間に入り試合を止めた。

 序盤はともに手数が少ない展開で、先に仕掛けてきたのはパリクテだった。一翔は7回に大振りの右を食らって「ガードの上からでも脳みそが揺れた。会場もザワついて、ヤバいのかな?と思った」と振り返った上で「連打してきて、勝負に来たな、と。ここで打ち勝たないと勝てないと思ったし、白黒しっかりつけたかった」とハードパンチャー相手に堂々打ち勝った。

 一昨年大みそかに一度は引退を発表したが、昨年米国で復帰した。同大みそかにはマカオで4階級制覇に挑戦。だが無念の判定負けを喫し、今年3月には日本のライセンスを再取得と紆余曲折を経たが、文句なしの形で4階級制覇を達成した。

 今後については「海外で統一戦をやりたい」と話し、ターゲットとして同じスーパーフライ級のWBC王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(29=メキシコ)を挙げた。さらに関係者によると、井岡ジム時代のジムメートでもある石田匠(27)の挑戦を退けたWBA同級王者カリ・ヤファイ(30=英国)と対戦し“敵討ち”にも意欲を示しているという。

 こうした軽量級のビッグネームと「海外でやりたい」というのが一翔の第一希望だが、ならばビッグイベントそのものを日本に招致しようというプランが浮上している。

 現在のボクシング界のビッグイベントというと、WBA&IBF世界バンタム級王者の井上尚弥(26=大橋)が参戦中の「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」だが、これより先に始まっていたのが、スーパーフライ級の王者やビッグネームが一堂に会して行うイベント「Superfly(スーパーフライ)」だ。

 同じ階級の大物の試合を一度にやるという画期的発想の興行は、一昨年9月、昨年は2月と9月に米国で開催された。井上はWBO同級王者だった際に第1回大会に出場し、一翔も昨年9月の「スーパーフライ3」(カリフォルニア州イングルウッド)に参戦した。現段階で次の開催時期などは未定だが「ならば一翔が王者となった場合、日本でやるようにするのもありでしょう」(関係者)としていたプランを一気に実現に向けて動きだすということだ。

 通常だと「王座決定戦」の勝者は、次戦が指名試合となる。ところがWBOの同級では、5月に行われた江藤光喜(31=白井・具志堅)とハビエル・シントロン(24=プエルトリコ)の「指名挑戦者決定戦」が無効試合になり、指名試合の相手がいない状態。このためさまざまな試合を組みやすい状況にある。海外志向の強い一翔も、日本で「スーパーフライ」級のビッグイベントに出場できるとなれば納得するはずだ。

「このベルトはいろんな意味で重たい。見たかった景色を見ることができた」という一翔が、さらに新たな景色を見るために戦い続ける。