村田諒太が語る“怪物”井上尚弥「衝撃TKO」の秘密

2019年05月21日 11時00分

圧巻のTKO勝利を挙げた井上(右=ロイター)

 日本の“怪物”がまたまた伝説をつくった。「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級準決勝(18日=日本時間19日、英国・グラスゴー)で、WBA世界王者の井上尚弥(26=大橋)はIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)に2回1分19秒で圧巻のTKO勝利。年内に予定されるWBAスーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)との決勝に進出した。世界を驚かせ続ける強さの“秘密”はどこにあるのか。前WBA世界ミドル級王者の村田諒太(33=帝拳)の見解は――。

 立ち上がりの1回こそ、プレッシャーをかけてくるロドリゲスに対して、井上は様子を見るような形になった。だが2回になると、相手の動きを見切って立て続けに3度のダウンを奪い、一気に勝負を決めた。

 新たにIBF王座を獲得し、これで主要4団体の世界王座制覇の快挙も達成した(日本人2人目)。試合後は「常に平常心を持ってこの英国に乗り込んできたので、今夜いいパフォーマンスができてホッとしている」と安堵の表情。3戦連続1回KО勝利こそならなかったが、19戦全勝のIBF王者に力の違いを見せつけ、世界中に驚異の実力をアピールした。

 衝撃の勝利を世界で最も権威のあるボクシング専門誌「リング」は「爆発的な2ラウンドでの勝利」との表現で伝え、米スポーツ専門局「ESPN」は「童顔の暗殺者」とのニックネームをつけた。昨年大みそかに元5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(42=米国)と拳を合わせた“キック界の神童”那須川天心(20)も「しびれました。とにかく全てにおいてしびれましたね。少し悔しい部分もあります。僕もああいう素晴らしい勝ち方がしたいです」と本紙に語ったほどだ。

 いったい、この強さはどこからくるのか。アマチュア時代から井上を知る村田は「ヒザの使い方がうまい」と説明する。具体的には「ヒザをうまく使って、全身のコーディネーション(調和)、体を連動させながらパンチを打っているんです」。

 この打ち方の強みは、下がりながらでも相手に効かせるパンチを打てることだ。実際、WBSS準決勝でも、2回にロドリゲスから最初に奪ったダウンは左右の連打を素早く叩き込んでのもので、大きく踏み込み体重を拳に乗せたパンチではなかった。しかもこのワンツーの前には空振りしている。普通ならバランスを崩してカウンターを食らうリスクがあったり、少なくとも体勢を立て直す必要がある。ところが井上は間髪を入れずに次の攻撃に移ってダウンを奪った。このシーンこそ、村田が指摘するヒザの使い方の「天性のうまさ」を証明している。

 本来のKОパンチは、衝突のエネルギーを最大限にするため、野球やゴルフのインパクトで体重移動を使うように踏み込むことで、パンチに体重を乗せて打つ。“神の左”と呼ばれた元WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏(36)はこの打ち方でKОを量産したが、井上はひと味違う形で威力を発揮している。

 次は世界的なスーパースターで5階級制覇王者のドネアが相手。井上は「僕の憧れの選手でもあるので、ファイナルで戦えるのがすごく光栄」と言い「誰とやるかが重要。次はドネアとやることに意味がある」と相手に不足はない。将来的には1階級上げてスーパーバンタム級で4階級制覇を目指すことが既定路線。日本の“怪物”はどこまで伝説を築き上げるのか、興味は尽きない。