年末恒例のボクシングの世界戦は、昨年12月30、31日に東京とマカオで6試合行われた。3試合はダウンシーンのない判定決着で会場が沸くシーンがそれほどなかった中、30日に東京で見事なKO防衛を果たしたのがWBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪(27=伴流)だ。

 世界ランキング1位の指名挑戦者エフゲニー・チュプラコフ(28=ロシア)を棄権に追い込んでの7回TKO勝利で初防衛に成功。昨年7月に日本選手37年ぶりとなる米国で王座奪取した実力を地上波中継(フジ系)で全国に知らしめたが、裏では“生放送剥奪”の可能性もあった。

 挑戦者は世界戦の10日も前に来日。しかし25日の公開練習後に体重を量ってみたところ、58・9キロのリミットに対して、なんと65キロもあった。陣営は急きょ「ドン・キホーテ」で体重計を購入。その後は「(減量は)大丈夫」と口にするだけで実際の体重を明かすことはなく、周囲をやきもきさせた。

 伊藤のV1戦はトリプル世界戦のメインイベント。仮にチュプラコフが計量失格して、勝っても王座は空位になるなど変則でのタイトルマッチとなった場合は、メインからトリプル世界戦の第1試合に“降格”され、テレビの生放送枠から外れることになっていた。昨年は計量失格のトラブルが多発しただけに、関係者の不安は募ったが、直前で一気に体重を落とした挑戦者は300グラムアンダーでどうにか前日計量をパスして、メインの座は死守された。もちろん、王者には何の落ち度もなかったのだが…。

 年明けに発表された平均視聴率は6・3%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。「もっともっと強い相手と、誰とでも戦います」という伊藤が、2019年のボクシング界をけん引する一人になりそうだ。