【ボクシング】村田諒太「まさかの惨敗」の舞台裏

2018年10月22日 14時21分

村田は試合後、腫れ上がった顔に氷のうを当てられた

【ネバダ州ラスベガス20日(日本時間21日)発】“獣の心”が裏目に出たのだろうか。WBA世界ミドル級タイトルマッチ(パークシアター)で、王者の村田諒太(32=帝拳)は同級3位ロブ・ブラント(28=米国)に判定0―3で敗れ、2度目の防衛に失敗し王座から陥落した。採点では、ジャッジ3人とも大差をつける完敗だった。大きな期待を背負って挑んだ聖地決戦でまさかの結末。敗因はどこにあったのか、舞台裏を追った。

「流れが良くなかった。(試合が)終わった時に負けたな、と思った。完敗ですね」。村田は、「109―119」が2人に残る1人も「110―118」という大差の採点を聞くと、納得した表情でブラントに握手を求め、その後は拍手して新王者をたたえた。

 得意の右ストレートを徹底的に研究され、打ち終わりに合わされて多数のパンチを被弾した。ブラントには一発で倒す強打はないが「(ダメージは)蓄積していた」(村田)の言葉通り、終盤にはパンチでのけぞるシーンもあった。

 ラスベガスのリングは通算3度目。聖地での世界戦は初めてだったものの、ゲンナジー・ゴロフキン(36=カザフスタン)戦など念願のビッグマッチ実現へ向けて結果はもちろん内容でアピールしたい試合だった。それがまさかの大敗――。敗因は何だったのか。

 まずは「強いムラタ」をアピールするため今回は食事のパターンを変えた。以前は一般の人と同じで一日3食だったのを朝夕の2食に。その理由について「朝走って食べて、その後昼を食べてから午後の練習だとおなかが重い。食事をして消化するのにもエネルギーを使いますし」とした上で「おなかがすいたから食べる。動物の本能って、そういうものじゃないですか。おなかがいっぱいだったら狩りはしないですよね」と説明していた。

 空腹だからといって村田が実際に「狩り」に出向くわけではないが、そうやって“獣”の本能を呼び起こし、獲物を仕留める闘争本能を日々宿らせてKO勝利につなげる…という目的だった。

 さらには、試合で使ったグローブはカナダ「ライバル」社製のもの。その特長について村田は「パンチが直撃しやすいんです」と表現していた。相手により多くのダメージを与えることができるグローブを選んだのは、もちろん倒すためだ。前日計量(19日)を終えた際は「相手の顔を見たら、倒したくなった」と早くも闘争本能全開。試合会場の花道も笑顔で歩き、意気揚々とリングに上がった。

 ところが…いざ対峙したブラントは「思ったより速くて、右を徹底的に研究されていた」ことで得意の距離に持ち込めなかった。唯一、3人のジャッジ全員が村田を支持した5回も仕留め切ることができない。この後のブラントは「もうちょっとスタミナ切れするかと思った」(村田)との予想に反してさらにギアアップ。6回以降はフルマークで「いいパンチを入れて流れを変えるはずが、(打たれた)村田の疲れのほうが早かった」(浜田剛史・帝拳ジム代表)。

 ブラントはまるで猛牛をかわす闘牛士のように、村田を翻弄した。結果的に村田は準備段階から完全なKO狙いにいったことが裏目に出て、空回りしてしまった格好だ。

 試合後は今後について「今すぐどうと言えるものではない」。顔の全面を腫らし、ショックの大きさを物語っていた。ロンドン五輪金メダリストは最も層が厚いとされるミドル級で、幾多の苦難を乗り越えながら世界王座をつかんだ。その上でたどり着いた夢の聖地決戦で衝撃の結末。大きな岐路に立たされたのは間違いない。