【ボクシング】井上尚弥「衝撃70秒殺」の舞台裏

2018年10月10日 11時00分

世界に衝撃を与えた井上尚弥(右)

「70秒殺」の衝撃は広がる一方だ。「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級トーナメント1回戦を兼ねたWBA世界同級タイトルマッチ(7日)で、王者の井上尚弥(25=大橋)はファン・カルロス・パヤノ(34=ドミニカ共和国)に1回1分10秒でKO勝ち。わずか2発のパンチで元同級スーパー王者を沈めて世界中にその名を知らしめたが、試合後にも驚きの光景が…。本紙しか知らない70秒殺の舞台裏を公開する。

 まさに一撃。試合開始から1分過ぎ、ワンツーで「体が勝手に動いた」(井上)という右ストレートがヒットすると、パヤノはリング上で大の字になった。日本人の世界戦最速勝利記録を更新した「70秒殺」で、WBSS準決勝進出を決めるとともに、WBA王座の初防衛に成功。世界約30か国に配信された試合で、世界戦7連続KO勝利、世界戦通算11KOと2つの日本記録をつくった衝撃決着は同じクラスの名王者にもため息をつかせた。

 この試合の解説を務めた元WBC世界バンタム級王者の長谷川穂積氏(37)は「『一発』があるのは本当にうらやましい。どんなに多彩な技術を持っていても、パンチがある相手には一発でひっくり返されるかもしれない。僕は『一発』がないから技術に頼るしかなかった」。バンタム級王座を10度防衛し、フェザー級とスーパーバンタム級王座も獲得して3階級制覇を達成した長谷川氏にすら、引け目を感じさせてしまうほどだった。

 さらなる驚きは試合後にあった。井上はドーピング検査用に尿に加え、血液も採取されたのだ。「尿はいつもですけど、血液は初めてです。やることは知らなかった」と本人もびっくりの検査。

 2014年12月にWBOスーパーフライ級王座を獲得した際には、それまでダウン経験のなかったオマール・ナルバエス(アルゼンチン)から4度のダウンを奪ってのKO勝ちに、ナルバエス陣営が「グローブに細工したのでは?」と疑い、試合後のリング上で確認したことがあった。今回のドーピング検査はWBSSの規定に基づいたものだが、ナルバエス戦同様にあまりの強さを疑われた?と思えるようなシーンだった。

 試合後に会場を出たのは午後11時過ぎ。駐車場には“出待ち”をしていた熱心なファンが30人ほどいたが、井上は「握手だけでもいいですか?」と言って自ら歩み寄っていった。衝撃KOにも浮かれることなく、人柄がわかる怪物の“神対応”には、ボクシングファンの評価もますます上がっている。

 WBSS準決勝ではIBF同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)VS同級3位ジェイソン・マロニー(27=オーストラリア)の勝者と対戦する。20日に米フロリダ州オーランドで行われるIBF戦を現地で“敵情視察”する予定で、「優勝しかない」と改めてトーナメントVを約束した。大橋ジムの大橋秀行会長(53)は来年の優勝達成後に、スーパーバンタム級に上げて4階級制覇を狙うプランを披露。最強怪物への期待は高まるばかりだ。