世界へまっしぐらだ。WBO世界フライ級の新王者となり、世界最速タイの12戦で3階級制覇を達成した田中恒成(23=畑中)が25日、本紙昨報通り、米国から取材に駆けつけたボクシングメディアの最高権威でもある「リング」誌のインタビューを受けた。この席で高い評価を得た新王者は一気の「P4P」入りも見えてきた。

 一夜明け会見には、木村翔(29=青木)を判定2―0で破った激闘を物語る腫れた目をサングラスで隠して登場した。田中は「ビデオで見たけど、いい試合だったと思います」と振り返った。

 1年前のWBO世界ライトフライ級V2戦では勝ったものの、眼窩底骨折の重傷を負った。目の負傷は気になるところだが、田中によれば「腫れているけど、感覚的には大丈夫だと思います」。

 スタミナを武器に前に出る木村を田中がスピードでどうさばくか、という戦前の予想を裏切り、足を止めて真っ向勝負を挑んだことに「あれだけ打ち合って、スタミナが持続して最後まで動けた。最初からくっつく(接近戦をする)覚悟ができたのが良かった」と勝因を語った。

 そんな新王者に「ボクシングのバイブル」の異名を持つ米「リング」誌がさっそくスポットライトを浴びせた。木村戦に特派員として派遣されていたライターのニック・タイラー氏は、前夜の試合後すぐにインタビューをリクエスト。一夜明け会見後に1対1で向かい合うと「昨日は素晴らしかった。『パウンド・フォー・パウンド』(P4P)入りに近づいた試合だったと思う」と絶賛した。

 この高い評価に田中も「そりゃ、うれしいですよ」と笑顔。同誌が独自に制定する最新ランキングでフライ級の6位にランクされている。5位が木村なので、次に発表されるランキングで上がるのは確実だが、そのまた上のステップ、体重差がないと仮定して全ボクサーの中で誰が強いのかを格付けした「P4P」入りが現実味を帯びてきたという。

 P4Pランクでは1位にWBA世界ライト級スーパー王者ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)、2位にWBO世界ウエルター級王者テレンス・クロフォード(30=米国)、3位にWBA世界スーパー&WBC世界ミドル級王者“カネロ”サウル・アルバレス(28=メキシコ)、7位には日本の“怪物”WBA世界バンタム級王者の井上尚弥(25=大橋)とそうそうたる顔ぶれが並ぶ。P4P入りすれば、田中も世界的スターに仲間入りすることになるのだ。

 木村戦直前の20日には、中京大学を本来より半年遅れで卒業できることが決まった。「今までは試合前に大学を休むから、試合後はその“ツケ”を払わされていたんですけど、それがなくなったのが3階級制覇と同じぐらいうれしいです」とホッとした表情。これで心置きなく、世界へ羽ばたくことができる。