【カリフォルニア州イングルウッド8日(日本時間9日)発】元3階級制覇王者の井岡一翔(29=SANKYO)が、昨年4月以来の試合となるスーパーフライ級10回戦に臨み、マクウィリアムズ・アローヨ(32=プエルトリコ)に3―0の判定勝ち。これまでとは一変した厳しい環境の中で、新しい姿を見せた。

 この日は日本で戦っていた時とは違って開始から積極的に前に出る。3回終了間際には鮮やかなワンツーでダウンを奪い、その後も手数で圧倒した。一翔はタレント谷村奈南(31)との結婚をめぐって所属ジム会長でもあった父の一法氏(51)と確執が生じ、昨年大みそかに引退を発表。それを7月に撤回し、米国での再起を表明した。

 日本時代のマッチメークは完全な“温室栽培”だった。直近の相手ノクノイ・シットプラサート(31=タイ)は「61連勝」が売りだったが、裏を返せばそれでも世界挑戦できないレベル。それがこの日のアローヨはWBCとWBOで同級3位の強豪だ。

 また、この日のテレビ中継は関東ローカルの深夜録画放送にとどまった。試合ごとに億単位のお金が動くスター選手と認識していた興行主からすれば、完全な期待外れと言える。

 こんな状況では、無難に勝っても“次”はない。すべてをお膳立てされていた日本を離れ、いわば裸一貫での出直し。拳でインパクトを与えて商品価値を高めるしかないことが前に出させた。

 一翔は「結果を残せてよかったのと、もっとできたというのと、複雑な気持ち」と感想を語ったが、日本初の4階級制覇に向けて「やっとスタートラインに立てた」は正直な思いだろう。毎試合崖っ縁のほうがボクサーとしての評価を高めることになるかもしれない。