まさかの裏には――。WBA世界バンタム級王者の“怪物”井上尚弥(25=大橋)が出場する最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ」(WBSS)1回戦は、10月7日に横浜アリーナで開催されることが21日、発表になった。日本開催が決まり「さぁ、行くぞ!」と気持ちが高まったファンも多いかもしれないが、なんとチケット発売についての発表はなし。それには日本初開催となるスーパーなイベントならではの事情があった。

 横浜でのWBSS1回戦は井上が持つWBA世界バンタム級王座の初防衛戦としても行われる。相手は7月にモスクワで行われた抽選会で元同級スーパー王者のファン・カルロス・パヤノ(34=ドミニカ共和国)となることが決定済み。注目カードが日本で見られるとなれば、すぐにでもいい席を買いたくなるのがファン心理というものだ。

 この日、井上vsパヤノがフジテレビ系列で生中継されることは発表された。通常の興行ならカードと同時にチケットの詳細も明らかになるが、それができない裏には日本初となる“超豪華”な演出が関係していた。

 WBSSの演出は「世界共通」。モスクワでの第1回大会決勝戦(クルーザー級)を観戦した井上は「色とかはシンプルだけど、それがいい感じで、独特の雰囲気があった」と絶賛する。

 試合が世界のどこで開催されても同様の華やかなものにするために、スタッフだけで150人が動員され、海外から持ち込まれる機材もあるという。

 ところが、ここに国内外の法律の違いが立ちはだかる。海外では客席の上に、照明やスピーカーなどの機材、ワイヤでつるした移動式カメラを設置するのはOK。その前提でWBSS側は考えていたが、日本では地震などによる落下事故に備えて絶対NGなのだ。

 WBSSの担当者が「何でダメなの?」と驚くほど認識のズレがある。とはいえ、許可が下りないことは確実なため今後、演出方法を“日本仕様”に変更する可能性が高く「そうなると客席のレイアウトも変わることになる」(大橋ジム・大橋秀行会長)。

 数万円のチケットを販売しておいて「演出上の理由でこの席は使えなくなりました」と購入者に言うわけにもいかない。何より未確定の部分が多く、座席をどこまで使えるかもはっきりしない。これが決戦まで2か月を切っても、チケット発売を開始できない理由だ。

 井上にとって強敵パヤノは約3年10か月ぶりのサウスポーとなるが「苦手ではないし、対策も順調」と不安はない様子。世界王者とランキング上位の8人のみが出場する最強トーナメントでパヤノに勝てば準決勝、決勝といよいよ海外で戦うことが予想される。

「そうやって勝ち進むことで(世界に)インパクトを与えられるし、プレッシャーをかけることになるかもしれないけど、全部KOで勝ち進んでほしい」(大橋会長)

 すでに海外のブックメーカーからは優勝の「本命」と予想され、井上も「簡単な道のりではないけど、必ず優勝できるようにしたい」。こうして決戦ムードが高まってきただけに、早くチケットの詳細も決まってほしいものだが…。