日本ボクシング連盟のドンこと山根明会長(78)が反撃開始だ。同連盟が助成金の流用や試合判定などで不正を行っていると、日本オリンピック委員会(JOC)などに告発状が提出された問題が波紋を広げる中、山根会長は2日、各メディアの取材に応じた。告発された数々の疑惑について猛反論した上で反体制派に対し、逆襲に乗り出す方針を語った。また、ボクシング界からは告発者側を問題視する声も噴出するなど、騒動はドロ沼の様相を呈している。

 入院先の病院を退院したという山根会長が各メディアの取材に応じ、心中を語った。3日前に大腸ポリープの摘出手術をしたそうで、テレビ各局の電話インタビューでは、告発された助成金の不正流用を認め、2016年リオデジャネイロ五輪男子代表の成松大介(28=自衛隊)には自分の高級腕時計ロレックスを売却して、160万円を“返金”したという。また、過剰な接待要求や“奈良判定”と呼ばれる不正ジャッジなどの疑惑については否定した。

 ロンドン五輪金メダリストでWBA世界ミドル級王者の村田諒太(32=帝拳)が7月28日にSNSで「悪しき古き人間達」に対して「そろそろ潔く辞めましょう」と書き込んだことに対しては、「大きなショックを受けたね。あの子には愛情を与えて金メダルを取らせたんですよ」と語気を強めた。

 今回の告発状については、「全部がウソだね。つくりだね。だから受けて立つ」と反撃に転じる方針で「(手術後だが)そんなんでへばっとったら、(一般社団)法人(日本ボクシング連盟)の会長はやっていけない」と近日中に大阪で記者会見を行うとした。さらに共同通信のインタビューで、法的措置を取る可能性について「考えている。名誉毀損ですね」と明かした。

 一方で、3日発売の「フライデー」が、山根会長と闇勢力との関係を報じた。元暴力団組長M氏と20歳から付き合いがあり、組事務所にも出入りしていたという。同誌の質問状に対して、連盟は組員としての活動は否定したが、M氏と親密な仲であることは認めた。地方連盟の関係者は「噂は聞いていた。連盟の副会長を務める息子さんも肩に『墨が入っている』と聞いたことも。足を洗ったか、付き合っているのか知らないが…そういう方が連盟にいること自体がとんでもないことだ」と、うんざりした様子で吐き捨てた。

 そんな中、村田が2日、自身のフェイスブックを更新。ナチスの強制収容所体験に基づいた書籍を引用しながら「石を投げるなら、同じ状況に置かれて自分が同じようなことを本当にしなかっただろうかどうかと自問してみること。人を糾弾する前に必要なことだと考えています」と意味深につづった。真意は不明だが、ファンからは「重い言葉」などのコメントが多数寄せられた。

 一方で、山根会長支持派も少なからず存在する。高校総体の会場にいた県連関係者は「会長のことばっかり騒ぐのではなく、告発してる方も均等に調べてみて。ホコリ出ると思うよ」としたうえで「ドシッとしてるし、貫禄あってええやん。実績がある人が(会長を)やればいい」との見解を示した。

 告発状を提出した「日本ボクシングを再興する会」によると、1日に連盟幹部から「話し合いをしたい」と提案があり「再興する会」側は報道陣への公開を条件としたが、折り合わなかったという。連盟幹部は「こちらから(話し合いを提案した)ということはない」と否定するなど、混乱ぶりがうかがえた。

 対立は激化の一途でアマボクシング界は完全にドロ沼にはまった。JOCと日本スポーツ協会は同連盟に対し、第三者委員会を設置して調査を要請する方針を固めたが、果たして真相究明はできるのだろうか。