ボクシング日本最速3階級制覇 井上尚弥 圧巻112秒殺も抱いた不安

2018年05月26日 16時30分

やはり怪物だ。圧勝した井上は拳を突き上げた

 快挙の裏で…。WBA世界バンタム級タイトルマッチ(25日、東京・大田区総合体育館)で同級2位の井上尚弥(25=大橋)は王者のジェイミー・マクドネル(32=英国)を1回1分52秒、TKOで撃破。衝撃の“瞬殺”で新王者となり、日本最速となる16戦目での3階級制覇を達成した。「文句なしの快勝」に誰もケチなどつけはしないだろうが、なぜか本人は今後へ一抹の不安も口にする。どういうことか?

 井上は試合開始と同時に左を打ち込み、1分半過ぎに左ボディーで最初のダウンを奪う。カウント8で立ち上がったところでラッシュに出ると、相手セコンドが棄権の意思表示だ。圧巻の112秒殺に「早過ぎるというクレームはご勘弁ください」と観客にわびたほどだった。

 この日、会場で計測された両者の体重は井上の59・5キロに対して、マクドネルは66・3キロ。ジャージーとシューズを身につけたまま量ったとはいえ、井上は5~6キロの“ハンデ”を負っていたが、「30秒で」パンチを見切り、前日の宣言通りにボディーを狙って仕留めた。

 今後は各階級の世界王者クラスが総額5000万ドル(約55億円)の超高額賞金をトーナメント戦で争う「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ」(WBSS)が戦いの舞台だ。3階級制覇王者は「オファーが来てます。参加します」と宣言。「相手が(誰か)というより、自分が整えて出られれば」と話す井上は一気に頂点まで突き進みそうな気配だが、一方で「(この日は)何ラウンドかやれたら『これがバンタム級』というのがあったけど何も感じないまま終わってしまった」との言葉が口をついた。

 前日計量では脱水症状で満足に立つこともできなかったマクドネルは、明らかにベストコンディションとは言えない状態だった。それをきっちり瞬殺したのは立派とはいえ、「自分にもまだ見えていない実力を引き出せるかな」(井上)と期待していた成果は得られなかった。

 今後、通常なら世界ランキング下位と“軽い”防衛戦をしてバンタム級に慣れる手法もあるが、王者級しか参戦しないWBSSでは不可能だ。敵地での試合となる可能性もあるだけに「次がトーナメントというのは…」と、一抹の不安を抱くのも無理はない。

 だがこの日の戦いぶりからは、そんな不安を吹き飛ばす期待を抱かせる。古くはファイティング原田に始まり、辰吉丈一郎、長谷川穂積、山中慎介といった偉大な王者が名を連ねる“黄金のバンタム”で、怪物はどんな伝説を築いていくのか。