〝バカサバイバー〟こと青木真也(39)が、ボクシング元世界3階級制覇王者の亀田興毅氏がファウンダーを務めるイベント「3150ファイトVol・3」(14日、エディオンアリーナ大阪)にまさかの毒ガスを浴びせた。

 今回は自身の戦場とは異なるボクシング興行ではあるものの、本戦で石井慧のプロボクシングデビュー戦が行われ、大会後に行われたエキシビション戦には天敵の皇治が出場。格闘技界も大注目の大会だっただけに、バカサバイバーのメガネが光るのも無理はなかった。

 大会から一夜明けて電話取材に応じた青木は「まずは何といっても石井慧だろ! 今回もしょっぱかったな!」とうれしそうに声をしゃがれさせる。石井は拠点とするクロアチアでライセンスを取得し、サトシ・イシイとして高山秀峰と対戦。ガードを固めながら前に出て相手をコーナーに押し込みパンチを放つ戦法で判定2―0の〝塩勝利〟を手にした。

 この試合を青木は「石井慧はどこで試合をしても、どんなルールでも変わらないんだ。しょっぱい」と一見、辛口の採点を下す。しかし続いて「芸事っていうのは徹底してやり続けることが大事なんだよ。石井慧は〝しょっぱい〟という芸を貫いた。その結果、我々のような好事家の大好物になった。決して大衆に受けるものではないけど素晴らしいと思う」と絶賛?した。

 本戦は石井の試合のみならず見たとして「プロモーター・亀田興毅は、ボクシング界の第3勢力になりえると思いましたね。大手に競合しない強さがある。切り口を変えるというか」と既存の興行にない演出やカードを評価する。そして「これでボクシング界に多様性が生まれる気がする。今後、大いに可能性があるよ」と話した。

 だが、大会後に行われたエキシビション戦の話題になるとトーンを一転し「そこまでさんざん上がってたからこそ、最後は痛かった…」と声を潜める。そして「アニキ(皇治)は厳しく言うと負けです。完敗。作りたかった世界観を相手に潰されました。アニキのこういう負け方は珍しいよ」と切り捨てた。

 試合を振り返ると、皇治は1ラウンド(R)からステップを踏みながら距離を取り、攻撃をかわしながら左ジャブを当てるなどボクシングルールへの適応を見せる。相手のヒロキングからは1Rに腰を振りながら動く奇妙なダンスで挑発をされるも相手にせず。2Rには掟破りの逆バッティング(頭突き)を仕掛けられるも対応。最終3Rは打ち合いになったが、最後まで両者は倒れず試合終了となった。

 では「世界観が潰された」とは一体どういうことなのか。青木は「エキシビションだからこそ、勝敗以外の所で見せなければいけないんですよ。徹底的にKOにこだわるとか。アニキはそういう世界観が作りたかったはずだ。ところがそこで相手が腰を振ったり派手なポーズや頭突きをした。その時に俺は『あ、だめだこれ』と思ったよ。エキシであれをやっちゃうと、緊張感がなくなるんだ」と力説した。

 最後に最近格闘技界で流行の兆しを見せているボクシングに準じたルールでのエキシビション戦について「ユーチューブのコラボと一緒だ。瞬間的な火柱は上がるけど先につながらないんですよ。文化を作ってないから」と分析。「ただし石井慧は違う。ルールをハックしているから面白い。石井慧が面白いんじゃなくて、ルールをハックしていることが面白い」と妙なことを口走ると、一方的に事務所の受話器を置いて取材を打ち切った。