立ち技メガイベント「THE MATCH2022」(19日、東京ドーム)で、〝キック界の神童〟こと那須川天心(23)が、K―1のエース・武尊(30)とのキック頂上決戦を判定5―0で下した。

 試合は開始のゴングから猛攻の那須川が試合をコントロール。1Rに左のパンチでダウンを奪うと最後までペースをつかんで完勝した。その勝利の裏には、父の那須川弘幸TEPPEN GYM会長(52)の強力なバックアップがあった。那須川が武尊へ対戦を初めてリング上から呼びかけたのが2015年8月の「BLADE FC JAPAN CUP」での55キロ級トーナメント優勝直後。実はこの時から「打倒・武尊」への戦いは始まっていた。弘幸会長は「天心がBLADEで(対戦したいと)言ってから武尊君の攻略法だけで大学ノート2冊書いてるからね。自分で」と明かす。

 なんと、息子が宣戦布告してから7年間、武尊の研究を続けて2冊の〝武尊ノート〟を作っていたというのだ。その熱意は驚異的で〝武尊の全試合を見たのか〟との問いにうなずくと「1試合あたり50回くらいは見てるんじゃないかな」と話した。実現するかどうかも分からない…どころか、可能性がほぼないとされていたころから研究を続けてきたというのだから恐れ入るばかり。戦前「ずーっと(武尊対策を)考えていますよ。だから(今は)自信しかない」と断言していた裏には、そんな積み重ねへの絶対的な自負があったのだ。

 ちなみに幼いころの神童について問われると「天才じゃないですよ。全然。同じことを何回も繰り返して時間を積み重ねて、やっとああいう風になったんです」と明かす。その上で「もともと、運動能力は普通の子より少しできるくらいだった。走ったってそこまで速くないし。それを例えば胴回し回転蹴りとかまでできるようになったのは、何回も何回も練習したからであって。バク転とかそういう運動をさせて、運動能力を小さいころに高めて変えていっただけです。努力を積み重ねて、苦しい思いをいっぱいしてきた男なんですよ」と話した。

 そんな想像を絶する努力と研さんを重ねて前人未到の頂きまで上り詰めた那須川親子は、これから別の道を歩む。息子・天心のボクシング転向を見送った後の自身の今後について弘幸会長は「〝第2の那須川天心〟をRISEに輩出していかなきゃいけない。(候補は)いますよ、いっぱい。みんな素質ありますよ」。名門TEPPEN GYMのトップとして、新たな時代を迎える立ち技界を名伯楽として支える。