ノアのGHCヘビー級王者・丸藤正道(35)が必殺技を進化させていた。6日の東京・有明コロシアム大会で杉浦貴(44)とのV5戦に臨む丸藤は、フィニッシュホールドに使用している虎王(二段式ヒザ蹴り)のバージョンアップに成功。ヒントになったのは総合格闘技界のパイオニア的存在・大山峻護(40)との出会いだった。

 杉浦戦を3日後に控えた3日、有明のノア道場で汗を流した丸藤は、充実感に満ちた表情を見せた。

「いいものができた。ブレーンバスターで持ち上げた相手を一度着地させ、トラースキックを入れたりするでしょ。あれを虎王にするのがいいかなと。持ち上げて着地させた瞬間にスコンと入れれば威力も倍増する」

 必殺技である虎王には挑戦者の杉浦も異常なほど警戒を強めている。研究され尽くされたようで、前哨戦では腕でガードされる場面もあった。そこで丸藤もさらに上をいくものをと熟考した結果、“新虎王”が生み出されたという。きっかけは意外な人物だった。

 10月上旬のこと。丸藤は格闘家たちが集まる食事会に参加する機会があった。中でも印象的だったのが、初めて対面した大山の存在だ。「大山選手と会ったことも刺激になった。すごくいい男ですね。プロレスと格闘技の話もしたし、それ以外の部分でも『自分たちは何ができるのか?』と考えていた。その業界で頑張っている人は考え方もしっかりしている」(丸藤)

 大山はPRIDEやHERO’Sでミルコ・クロコップやヴァンダレイ・シウバと戦い“不屈の日本男児”と異名を取った日本人総合格闘家の草分け的存在だ。「プロレス以外のいろいろなものを見たり聞いたりするうちに、イメージが湧いてきた」と丸藤は明かす。

 くしくもGHC戦当日の6日、有明コロシアムとは真向かいのパンクラス・ディファ有明大会で大山は桜木裕司と引退試合を行う。「余裕があれば大山さんの試合を見てから、自分の試合に臨みたい」。さまざまな感情を胸に、王者は有明決戦のリングに立つ。