立ち技打撃格闘技イベント「RISE WORLD SERIES 2019」(16日、千葉・幕張メッセ)で“キック界の神童”那須川天心(21)が、志朗(26)との58キロ級トーナメント決勝戦を制して優勝した。試合後はK―1のエース・武尊(28)に改めて対戦を要求。キック界の“天下統一”の先に見据える究極の目標に向けて動きだす。

 決戦に向け「最近、前重心になりすぎているので、攻防一体で戦いたい」と話していた那須川は、その言葉通りハイレベルな試合を展開した。開始早々、志朗から自らの得意技である胴回し回転蹴りを仕掛けられるも、すぐに同じ技で応戦。カウンター狙いの相手にジリジリと圧力をかけながらパンチを打ち込み続け、ペースを握った。

 そのまま最後まで試合を支配し、判定3―0で勝利。試合後はマイクを持つと「ライバル的な存在の志朗君とこういう舞台で戦えてうれしかったです。もっともっと成長します。まだまだこれからです」。だが、直後に爆弾発言が待っていた。

「最後に一つ、武尊選手とK―1の陣営に言いたいことがあります」と切り出し「僕はこの格闘技界を盛り上げるために人生かけて戦ってきたつもりです。自分にはやりたいことがたくさんあります。強い選手同士戦うのが本当の興行なんじゃないですか? 僕は逃げも隠れもしないです。さっさと正式な話をください。待ってます」と呼びかけ、ファンから大歓声を浴びた。

 国内の最強立ち技戦士決定戦と言える2人の対戦はこれまでも熱望されてきたが、団体の垣根もあり実現せずにいる。「日本だけに収まりたくない。世界に出て、自分の存在を知らしめたい」と語るように、世界進出だけでなく、その先の夢を抱く那須川は、国内ですらファン待望のカードが実現しない状況に歯がゆい思いをしている。

 夢の一つに、キックボクシングの五輪種目入りがある。ただし団体やイベントが乱立する現状では、現実的でないのは事実。それでも「そういうムーブメントを起こしたいんですよね。格闘技、キックボクシングが五輪種目になるような」という思いから、一歩でも前進させるために導き出した答えがキック界の“天下統一”だ。

 しかも統一する機構がないのなら、自分がそうなってしまえばいいというなんとも神童らしい発想で「自分がテッペンを取ってということですよね。難しいことですけど、テッペンを取って、自分が突き抜けるしかない。誰も文句を言わないようなところまで思い切り突き抜けて、その上で(五輪種目入りの)ムーブメントを起こしたいです」と力説。その思いが武尊への対戦要求につながったのだ。

 RISEの伊藤隆代表(48)は「どこかニュートラルな環境でできるのが一番」と那須川を全面バックアップする方針を示し、さらに「うちは全面戦争でも構わないです。あとは向こう次第」とK―1サイドにメッセージを送った。今度こそ神童の声はライバルに届くのか、年末に向けて注目になってきた。